女が男に求める条件とは?
男と女の問題―。
ことを急がせようとする男に、なかなか応じない女。
リスクを侵してでも行動したい男に、リスクはなるべく避けたい女。
移り気な男に、彼一筋の女。
対立、すれ違い、意見が噛み合わない……。
いつの時代にも存在し、これからもわかりあえそうにない、永遠の男女の問題。いったいどういうところから発生し、どうして解決しないのでしょう?
それは、男と女の繁殖戦略の違い。それも正反対を向いたベクトルに問題があるのです。女は一度妊娠したなら、出産、子育て、とスケジュールは目白押し。
次に子を得るまでには年単位の時間が必要です。産むことのできる子の数に限りがある。
よって同じ子を産むなら、できるだけ質のよい子を、ということで慎重に男の質を見極める。(質がいいかどうかは、男としての魅力に富むかどうかで、究極的には免疫力の問題になります。ともかく学歴や収入はまったく関係ないと言っていい。)
愛すべきおバカな男の魔力
ところが男の場合、そういう制約はないに等しい。男が次に子を得るチャンスは、極端な話、失われた精子が回復したとき。
つまり男は日単位(時間単位?)でものを考えることができるのです。
こうして男は、ダメで元々でどんどん女にトライする。できることは何でもやってみる。相手の質などとやかく文句は言わず、来る者すべてを受け入れる、くらいの方が繁殖の上で成功する……。
このように相反する構図ができあがる。対立も、噛み合わないのも当然です。だから何なんだ、と言われると困るのですが、こういうからくりになっているのだと理解することが重要。
ものの見え方がまるきり違ってくるし、そもそも男が俄然、愛すべきおバカに思えてきます。
たとえば男は、女の髪型が少々変わってもちっとも気づかない。当然!男は細かいことにいちいち気づくようでは繁殖のチャンスを失ってしまいます。
相手がかなりのブサイクでも、なかなかのいい女じゃないかと見えてしまうくらいの、「違いのわからない男」であることが成功の秘訣。
男は、グラビアアイドルの写真、AV、ネットのスケベサイト、何でもござれ。
ヴァーチャル・リアリティな体験でもその都度興奮する。これも当然。男は好みの範囲が広いことが重要なのです。
他方女は、慎重に相手を見極め、各々が選んだ、〇〇さまとでも呼ぶ、とびきりいい男一筋でいく。とは言うものの、です。
女がいくらそのとびきりのスターを、あるいは身近にいる、特別イケてる男を思い続けてたとしても、たいていは別の女に取られてしまいます。
妻の座に収まることなど不可能に近い。
でも、どうせなら女は、質のよい男の、質のよさを受け継いだ子を得たいことに変わりないわけで……。
どうするか?その解決策こそが、浮気です!詳しくは次回に。
動物行動学エッセイスト。
1956年生まれ。1979年京都大学理学部卒業後、同大学院にすすみ、博士課程をへて著述業に。
1991年に出版された『そんなバカな!-遺伝子と神について-』は、ベストセラーとなり、第8回講談社出版文化賞「科学出版賞」を受賞。