妊活や不妊は、夫婦の絆を強めるチャンス
基礎体温を計り、食事や生活リズムに気を配るなどして、妊娠するために生活を整える、「妊活」。妊活に加え、病院で指導や治療を受けて妊娠を目指す、「不妊治療」。妊娠をめぐり、こうした活動があるということは、みなさんご存知ではないでしょうか。
それと同時に、「妊活は大変」「不妊治療はつらい」、こんな認識も広まっているように思います。たしかに、妊活や不妊治療にそうした側面があることは否めません。不妊治療や妊活を続けていると、時には夫婦の絆を揺るがすような場面に出会うこともあります。
しかし、夫婦の危機は一転してチャンスにもなり得ます。不妊をきっかけに夫婦が互いに向き合うことができれば、これまでより一層強い絆を作ることもできるはず。今回は、不妊や妊活に向き合う夫婦のあり方についてお話ししましょう。
夫婦の間で、大切なことを話し合っていますか?
夫婦とは、実に不思議な関係です。それまでまったく異なる環境で生きてきた2人が一緒に暮らしている関係なのに、意外と大切なことが話し合われていないことが多いのです。
たとえば、子どもについても「子どもが欲しいか、欲しくないか」という、おおまかな点は話しているものの、
- いつ頃までに子どもがほしいか
- 何人くらいほしいか
- 不妊治療はするか、しないか
などの一歩踏み込んだことについては、話し合われていないケースがほとんど。
そのため、結婚して1年、子どもを授からないので、「不妊の検査をしてみよう」と妻が提案しても、夫からは「まだ早くない?」という反応がきてしまい、妻はなんだかモヤモヤする…という事態がおきてしまうのです。
ですが、考え方を少し変えてみると、こうした問題は夫婦関係にとってプラスになるともいえます。何事もなく妊娠していたら、夫婦の間で話し合いを持つことがなく、大切なことに対する2人の認識がうやむやなままになっていたかもしれません。
不妊をきっかけに2人のあいだで大切なことを話し合える ようになれるとしたら、これは夫婦関係にとって、とても大きなプラスだといえるのではないでしょうか。
不妊をきっかけに、夫婦仲が深まる
不妊が夫婦関係にとってプラスになるケースは、ほかにもあります。不妊が夫婦の仲を深めるきっかけになることもあるのです。
多くの夫婦にとって不妊は、突然降りかかってきた事故のようなもの。病気等であらかじめわかっている場合を除き、はじめから不妊を予想している人はいません。不妊に悩むほとんどの夫婦にとって、望んでいるのに子どもができないという状況は、まったく予想しなかった出来事なのです。
予想していない出来事に遭遇したとき、人はそれにどう対応していくべきか悩み、苦しみます。だからこそ、不妊に関する悩みは尽きず、不妊治療はつらいものになるのです。けれども、それをきっかけに夫婦の関係を見直す人たちもいます。
- 夫婦ともに「子どもが欲しいね」とは言っていたが、具体的なことは話していなかった。不妊治療をきっかけに「いつ頃までに、何人くらい子どもが欲しいのか」について話し合い、お互いに子どもが欲しいという気持ちが一層強くなった。
- 不妊治療を始めるにあたり、どこまで治療をするか(体外受精まで行うかどうか)夫婦で話し合った。その過程で、仮にこの先、子どもができなかったとしても、夫婦2人だけで仲良く暮らしていくという道も見出すことができ、子どものいない人生が不幸だと感じなくなった
このように、不妊によって夫婦の絆が強まるケースは決して少なくないのです。
不妊を経験することで、本当の夫婦になれることも
不妊や妊活において、夫婦間ですれ違いが生じてしまうことはおかしなことではありません。生理があって毎月ホルモンバランスや体調の変化と向き合っている女性に比べ、男性は元々、自分の健康や体への意識が低い傾向にありますし、妊娠や不妊に関する予備知識の量にも大きな差があります。その状態ではむしろ、すれ違いがおこるのは当然だといえるでしょう。
しかし、これを乗り越えることで、夫婦はさらに強い絆を手に入れることもできます。不妊を経験したことで、本当の夫婦になることができたという声もたくさん聞こえてきます。
不妊治療は、決してつらいことばかりではありません。夫婦の関係を見直し、絆を強めるチャンスと捉え、前向きに乗り越えていってください。
PR会社、マーケティングリサーチ会社、モバイルコンテンツ制作会社などでの勤務を経て、2009年よりフリーランスのライターに転身。
おもに妊娠や不妊に関する執筆を手がけ、医師や専門家への取材も多数。2014年4月に発売された「不妊治療ステップアップベストガイド」の執筆を担当。レディース予防医学指導士。