そもそも亜鉛って何？
「亜鉛（あえん）」と聞くと、体にすごーく悪そうなイメージを持っている人が意外に多いみたいです。たぶん、これは「鉛（なまり）」と勘違いしているせい。
亜鉛の化学記号は、Zn・英語でジンク。鉛の化学記号は、Pb・英語でレッドで全然別物。
鉛は有害金属ですが、亜鉛は、カルシウムや鉄、マグネシウムほどの知名度がないものの、私たちの体に必要な金属（＝必須ミネラル）の1つなんです。体重50キロの人だと体内に1.6gも存在しているんですよ。
体内では骨に一番多く、体の組織でいえば、眼球、肝臓、筋肉、腎臓、前立腺、脾臓に多いようです。ちなみに、体液では精液に多く存在します。
さらに蛇足ながら、亜鉛が体内のどこに貯えられているというかという視点でいえば、骨と脾臓が倉庫ということになります。
あまりにも専門的になりすぎますので控え目に書きますが、生理的には、体内の200を超える酵素の活性に関わっています。
これらの酵素は体内で、免疫を補助していたり、傷を治りやすくしたり、正常な発育を助けたりしています。細胞レベルの話ですと、細胞分裂にも大きく関わっています。
現代社会は亜鉛不足が多い！？
体内の亜鉛はすべて食事から得たもので、食事での1日の必要量は、厚生労働省が2005年に定めた「日本人の食事摂取基準」では、成人女性の場合、1日当たりの必要量で6mg、推奨量で7mg、上限が30mgとなっています。
1日の必要量である6mgの亜鉛を摂るためには、単品での場合、牡蠣1個半、豚レバー3切れ（約120g）、輸入牛サーロイン3切れ（約200g）、玄米6杯（340g）などでコト足ります。
しかし、インスタント食品中心の食事（＝亜鉛の少ない食事）、牛乳や食物繊維の摂りすぎ（結合して亜鉛を小腸での吸収を妨げる）、穀類中心で赤身の肉を食べない食事（＝食物中に含まれるフィチン酸が亜鉛の吸収を妨げる）、胃腸が弱い場合（＝亜鉛が吸収されにくい）、避妊用ピルや糖尿病の薬、抗生物質の連用（＝亜鉛の吸収が低下してしまう）などの原因により亜鉛不足となる場合もあります。
肌がカサカサしたり、爪が変形したり、味や臭いが分からなくなったり、唇に潰瘍（口内炎）ができたり、生理が不順になったりした場合、亜鉛不足も1つの原因として疑ってみる必要がありそうです。
専門的には、亜鉛はインシュリン（血糖値のコントロールに関与）の生成にも関係しているため、糖の代謝に影響したり、免疫機能や甲状腺機能が低下したりという影響も、不足した場合に起きる可能性があります。
亜鉛で魅力的なラブライフを
意外なことに、忙しくて食事が不規則かつ外食中心、おまけに夜はお酒漬け…そんな男性に潜在的に亜鉛が不足していることもあるようです。
先に、亜鉛は精液にも多く含まれると書きましたが、亜鉛不足は性腺機能の低下、男性ホルモンの分泌低下をもたらし、精力減退、勃起不能、精子減少、場合によってはインポテンツなど、生殖機能そのものの低下を招くことがあります。
もし、彼氏が夜の生活に弱くなっていたり、精子が薄いような感じがする場合、亜鉛不足を疑ってみる必要もありそうです。
亜鉛を積極的に摂れば精力がつくわけではありませんが不足している場合に不足分を補うことで精力が回復する可能性は多いにあります。
実は、亜鉛そのものは有害。そのため、サプリメントなどでは、亜鉛酵母といって、亜鉛を酵母に吸わせて培養し、無毒化したものが用いられています。（注：牡蠣などの食品に含まれている亜鉛は無毒です。）
過剰に摂取した場合、ミネラル間でのバランスをくずし、鉄などの吸収を妨げてしまいますので、1日12mg程度の量でよいと思います。
もちろん、生理などの女性特有のものにも亜鉛は関与しています。その意味ではカップルでサプリメントを一緒に試してもよいでしょう。
もちろん、食事はおろそかにしないように！食事内容を改善しながらサプリメントを併用する必要があることはいうまでもありません。
薬剤師。1969年東京薬科大学卒業。
1992年伝説のクイズ番組『カルトQ』（フジテレビ系）で最高得点を記録し優勝。これまで、調剤薬局運営や薬剤師ライターとして多数の健康雑誌に連載を持つなど活躍。
