本格的に感じてくると…
「女性が目を閉じ、口を開けて、舌を出し、息遣いが荒くなってきたら、欲情が脾臓にまで達したことがわかります」
ここで言う「脾臓」は、現代医学で言う「脾臓」ではなく、あえて言うなら膵臓に当たります。
「この時、男性はペニスを浅くゆっくり出し入れするといいでしょう」
女性に受け入れる準備ができているからと言って、「奥まで」「激しく」するにはまだ早いようです。浅くゆっくり突いてもらいましょう。
愛液があふれて来たら……
「女性器の中が暖かく潤い、愛液があふれてきたら、欲情は体の奥の腎気まで達しています」
「腎気」は「腎臓」のことではなく、内分泌系、泌尿生殖器系、免疫系、そして中枢神経の一部まで含む、広い概念です。性器や体の表面だけでなく、内臓の奥の奥まで感じている状態です。
「男性はペニスを抜いて、女性器の入り口の左右を横に突くようにするのがいいでしょう」
ここで一度ペニスを抜くのは、この後に向けて焦らすためと考えられます。
アクメに達したら…
「女性が絶頂に達し、感極まると、脚で男性の腰を挟み、キスをねだるようになります。これは欲情が肝臓の気まで達した証拠です」
「肝臓」は、自律神経や血液の循環を司ると考えられていました。「もうどうにでもして…!」な状態ですね。
「この時、男性ははじめてペニスを深く挿入し、静かに左右に突くようにするといいでしょう」
子宮口を刺激して得られる「ポルチオ性感」は、女性が高まっていないのにがむしゃらに刺激しても、得られるものではありません。ここまで高まってはじめて、「奥が感じる…!」ようになるのです。意外と男性はこのことを知らず、がむしゃらに奥を突いてきたりします。優しくたしなめ、二人でもっと燃え上がれるセックスにしていきましょう。
イった後は…
「女性が達して反応を終えると、ため息をついて手足の力が抜けます。そうしたら、男性はペニスを抜くのがよいでしょう」
『黄素妙論』は、快楽のためのセックスではなく、男女(特に男性)の健康増進のためのセックスの指導書ですので、「一緒にイク」ことを目指してはいません。むしろ、男性はできる限り射精をしないようにすることを推奨しています。
「この時、女性がさらに快楽を求めて、ペニスを抜かせまいとしたり、未練げにもだえて求めてくる場合があります。そうなっても、それに応えてはいけません」
女性は連続的にオーガズムを感じることができますから、男性がまだ達していなければ、さらに求めるのは自然なことです。ここは『黄素妙論』には逆らって、現代では激しく求めて構わないでしょう。「一緒にイク」ことにこだわり過ぎるのはよくありませんが、目指すのはよいことだと思います。
1970年生まれ。1996年より、漫画原作者として活動。2009年、日刊誌連載「日本性史」にて、アダルトライターとして活動開始。
スマートフォンアプリ「セックスの日本史」、女性向けWEBサイト連載「蔦葛物語」「オンナとオトコの日本史/世界史」などの著作がある。