女性は常に考えている?
これまでの4回で、男性の匂いには誰の鼻にも明らかな、いい匂い、悪い匂い、つまりは絶対的ないい匂い、悪い匂いがあります。
その一方で、ある女性にとってはいい匂いなのに、別の女性にとってはあまりいい匂いではない、つまり相対的な匂いがあるというお話をしました。
前者の背景にあるのが、当の男性の免疫力であること。女性は男性の免疫力のほどを、匂いがいいかどうかで嗅ぎ分けていることを紹介しました。
少しおさらいすると、皮膚から出てくる汗や皮脂は、元々はほとんど匂いがない。皮膚に住みついているバクテリアによって分解されて、初めて臭くなります。
よって、臭い男性というのは、そういうバクテリアの増殖を抑え込むことがあまりできていない男性です。つまりは免疫力が低い男性なのです。こうして女性は匂いで免疫力の高い男性を選んでいます。
しかし、女性による男性選びというものは、選んだからすぐに交わり、その男性の子を産むということになるわけではありません。
そういうケースもないわけではないが、しばらくお付き合いをし、吟味するというステップを経るのが普通でしょう。
女性は排卵期のときにどうなるの!?
そんなわけで、男性の匂いが染みついたTシャツを女性に嗅がせ、その男性の免疫力を女性が見抜いているという実験を行いました。
R・ソーンヒルらは、次なる研究として、実際にお付き合いをしている学生のカップルを調べました。
今回、Tシャツは登場しません。その代わりに、排卵期と非排卵期に1回ずつ女性にアンケートをとりました。
一方の男性は、免疫力について調べられるわけですが、免疫力というものは血液を検査すればすぐわかるというようなものでもありません。
そこで客観的な尺度と言える、体のシンメトリー具合を測定します(なぜシンメトリーと免疫力が関係するかは、このシリーズの第1回目を参照して下さい)。
たとえば、耳の長さと幅、肘の幅、手首の幅、親指以外の指の長さ、足首の幅、足の幅、の10項目について左右の値を測定して左右でなるべく差がない方が免度力が高いと言えます。
そこで、問題になるのは、女性が今付き合っている相手が免疫力が高くない男性である場合は、アンケート結果によると、肝心の排卵期にパートナー以外の男性に興味を抱く傾向があるそうです。
排卵期ではないときにはそれほど感心はないのに排卵期になるとハッキリとあります。そしてもう1つ、排卵期にはパートナーに興味を失ってしまう傾向があるそうです。
排卵期ではないときなら、興味があるともないとも言えないのに、女性が今、こういう状態にあるとしたら、その後どうなるか…言うだけ野暮ですね。
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動物行動学エッセイスト。
1956年生まれ。1979年京都大学理学部卒業後、同大学院にすすみ、博士課程をへて著述業に。
1991年に出版された『そんなバカな!-遺伝子と神について-』は、ベストセラーとなり、第8回講談社出版文化賞「科学出版賞」を受賞。