『医心方・房内』は、平安時代に、上流階級の男性をターゲットとして書かれた書物です。そのため最初に、「セックスを通じて女性から精気を得て、不老長寿を保つ方法」が書かれています。今回はこれについてお話ししていきましょう。
いにしえの世の男性の願望…?
『医心方・房内』では長寿のためのセックス方法が書かれていますが、現代では考えられないような内容もあれば、なるほどと頷けるものまで。
まずは現代では信じられない内容の例をご紹介しましょう。不老長寿のためのセックスの条件として「若い処女」「顔のつくりに拘らない」「複数人プレイ」…はい。いにしえの世の男性の欲望が透けて見えるような気がするのは、気のせいでしょうか…?
女性から精気を得るセックステクニック大公開!
それではいよいよ、いにしえの世の男性が精気を得たとされるテクニックをご紹介いたします。
「セックスそれ自体に、特別なテクニックは必要ありません。まずは男女共に、十分にリラックスしましょう。女性の体には、丹田(へその下)から触れて、ゆっくりとアンダーヘアのあたりまで、撫でたり、手を振動させたりしながら、愛撫していきましょう。ディープなキスを同時にするとなお結構です。女性の緊張がほぐれたと確信したら、性器を同じようにして愛撫しましょう。」
これは大変丁寧なセックスのスタートといえます。現代でも女性に喜ばれるセックスのための入り口ですね。
「女性の気分が十分に高まると、以下のような兆候が現れます。耳が酒に酔ったように熱く火照り、乳房は手のひらに溢れんばかりにふくらんで、乳首は硬くなり、首をやたらに動かし、両脚を震わせます。このような状態になったのを見計らって、少し体を縮めたまま、男性器を浅く挿入します。そうすると女性の精気を吸い取ることができるのです。」
たしかに女性がしっかりと感じている状態のほうが、精気が満ち溢れていそう…というイメージはわからなくもありません。男性側も女性が感じていればより興奮しますから、充実したセックスができそうですよね。
感じている女性の唾液は百薬の長!?
「この状態の女性の舌先からは内臓の分泌液が沁み出てくるので、舌先を吸って唾液を飲むことも大事です。この特別な唾液さえ飲んでいれば、穀物を食べなくても生きていけます。特別な唾液を多く飲めば、胃の調子がさっぱりし、口の渇く病気が癒えて、のぼせも下がり、皮膚も処女のように艶やかになります」
今となっては科学的根拠のない文章ですが、よいセックスをすると、男女とも元気になり、肌がツヤツヤしてくるのはお分かり頂けるのではないでしょうか。ただし内臓の病気はセックスで治らないですし、ご飯を食べないと人は倒れると思います…。
しかし、女性の身体に見られる変化を細かく表現された文章を読むと、この時代から男性は女性の感じる姿を観察して自らも快感を得ていたことが分かりますね。パートナーのためにも恥ずかしがらずに感じている姿を見せてあげると、ラブタイムがより盛り上げるかもしれません。
今回は「男性が女性から精気を吸収する方法」でしたので、次回は「女性が男性から精気を吸収する方法」をご紹介します。
■イラスト:フジワラアイ
1970年生まれ。1996年より、漫画原作者として活動。2009年、日刊誌連載「日本性史」にて、アダルトライターとして活動開始。
スマートフォンアプリ「セックスの日本史」、女性向けWEBサイト連載「蔦葛物語」「オンナとオトコの日本史/世界史」などの著作がある。