男性不妊とは
ここ数年、不妊についてメディアで取り上げられる機会が多くなったことで、「不妊の原因は男性にもある」ということを、ご存知の方も多いのではないでしょうか。実際、不妊で悩むカップルのうち、約半数は男性側にも原因があるといわれています。
さて、そんな男性不妊の原因には、どんなものがあるのでしょうか。
男性不妊の原因は、大雑把に言うと、「精子に問題がある場合」と「セックス(性機能)に問題がある場合」の2つに分けることができます。それぞれ、おもな症状と疾患名を書き出してみました。
(1)精子に問題がある場合
- 精子に元気がない(精子無力症、精子不動症)
- 精子がない(無精子症)
- 精子が少ない(乏精子症)
(2)性機能に問題がある場合
- 勃起しない(ED:勃起障害)
- 膣内で射精できない(射精障害)
何らかの原因で上記のような症状が生じ、妊娠の妨げになっている状態が、男性不妊です。
原因は先天性が多いとされていますが、心因性のものや後天性の場合もあり、一概にはいえません。根本的な治療が難しい
また、男性不妊には、厄介な問題があります。それは、原因はわかるものの、それを治療する確実な方法がまだ十分に確立されていないことです。たとえば、精子に異常があることが分かった場合、それを改善するもっとも確実な方法は「正常な精子をつくる」ことです。しかし、現代の医学では、治療で精子をつくるところまで技術が発達していません。そのため、治療法としては元気な精子を見つけて顕微授精(体外受精の1種で、精子を直接卵子に注入する方法)をすることが主流となっていて、根本的な改善にはいたっていません。 それに、実は男性不妊には、「原因はわかっても治療が難しいこと」以上に重要な問題があるのです。
治療法よりも重要な、男性不妊の一番の問題とは
男性不妊で抱える一番の問題、それは「男性が検査を受けてくれない」という、もっとも根本的なことです。
男性にも不妊の原因があることが知られてきてはいても、「不妊治療は夫婦一緒に行う必要がある」という認識までは、まだ共有されていないのでしょうか。まずは女性ひとりだけで不妊治療の検査に行くということが多いようです。
残念ながらこれでは、不妊治療を効果的に行うことが難しくなってしまいます。
仕事が忙しかったり、プライドが邪魔をしたり、現実を受け止めることが難しかったり、男性が病院に行きたがらない原因は様々あるでしょう。
しかし、生理があって毎月ホルモンバランスや体調の変化と向き合っている女性に比べ、男性は元々、自分の健康や体への意識が低い傾向にあります。そんな男性が、不妊治療のスタート時点で遅れをとってしまえば、その後追いつくことは非常に難しく、どんどん女性側との差が広がってしまうでしょう。これでは本来うまくいくはずだった治療も、うまくいかなくなる可能性が出てきてしまいます。
男性不妊の改善に大切なこと
何よりも大切なのはまず、きちんと検査を受けることです。
病院によっては、「男性はいきなり受診をせず、自宅で採取した精子を奥さんが持って行って検査する」という対応をしてくれるところもあります。それならば、検査のハードルはだいぶ下がるのではないでしょうか。通いやすいところにそうした病院があるかどうか、調べてみる価値はあるのではないでしょうか。
そして、その結果、もし男性側に原因があることがわかっても、女性は決して男性を責めないこと、そして、男性は「自分に原因がある」という現実をきちんと受け止めることを心がけましょう。ナイーブな男性にとって、自分に不妊の原因があると言われるのはつらいことかもしれません。しかし、実際に治療を進める上で、大変な思いをするのはほとんどが女性の側です。どんなに男性の側に原因があろうとも、精子の採取が終われば、そこで男性の役目は終了。あとは、女性が注射や投薬などでホルモンバランスを整えたり、排卵をしたり、何度も病院に通ったりすることで不妊治療は進められていきます。
そのことをしっかり意識してお互いを思いやることが、不妊の改善にとって、もっとも大切なことなのです。
PR会社、マーケティングリサーチ会社、モバイルコンテンツ制作会社などでの勤務を経て、2009年よりフリーランスのライターに転身。
おもに妊娠や不妊に関する執筆を手がけ、医師や専門家への取材も多数。2014年4月に発売された「不妊治療ステップアップベストガイド」の執筆を担当。レディース予防医学指導士。