経済とセックスの移り変わり

平安時代のラブ&セックス!歴史に見る女性とお金と結婚と…

公開日: 2015/08/24  最終更新日: 2024/04/16
経済とセックスの移り変わり
     

    平安時代、女性は「職場」が出会いの場だった?!

    運命の人と出逢いたい」という想いを抱き、毎日を生きているのはなにも現代人だけではありません。そもそも現代人以上に、平安時代の人々の恋愛感覚は、研ぎ澄まされていたと思われます。平安時代といえば1000年ほど前の昔ですが、日本ではすでに世界初の長編恋愛心理小説である『源氏物語』が書かれていました。それは日本にすでに洗練された恋愛文化が存在していたことの証しです。

    平安時代の女性
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    また古代日本の恋愛文学が女性だったのも、たとえば『源氏物語』の作者・紫式部も「女房」という、宮中で働く女性だったことが影響していると思います。ある史料によると9世紀以降は、女房たちへの現金給与の支給は滞りがちだったとされますが、そのデメリットを超えるよさが、女房の仕事にはありました。彼女たちが仕える最上流階級のお屋敷には多くの男性たちが訪れました。「出会い」が期待できたわけですね…。

    平安女性の「運命の人」の見つけ方とは

    それでは平安時代の女性は、出会いの中からどのように「運命の人」を見つけていたのでしょうか。これが本能を直球で信頼したものでした。好きな人ができたら、早いウチにセックスはしておくべし、ということなのです。初めての夜、お互いに特別な情熱(コレが重要)を感じることが出来れば、次の段階がようやく考えられるという仕組みで、本気でデートを重ねるのは、最初のセックスの後でも十分という考え方ですね。

    平安時代では明るいところでお互いの顔を見せあうことは(つまりデートの類は)、セックスよりもよほど大胆な行為ですらありました。現代人のカップルなら、明るいお風呂に堂々と一緒に入れるようになるくらいに、お互いを信頼した証だったそうですが…相手の「顔の良さ」に、色々と引きずられないようにするための工夫だったかもしれません。

    平安時代の男性

    現代では結婚を意識した関係になると、収入や仕事などの条件を気にすることがあります。平安時代とは全く違う価値観だと感じます。また早い段階で体の関係を持つ風習のため、「恋人探し」が「結婚相手候補探し」としての側面も強い現代とは違って、デートでは完璧に思えた相手も一晩一緒に過ごしたら「しっくりこない」「でも別れるのはもったいない気が」…なんて残念な結果もなかったことでしょう。

    現代の「身体は嘘をつけない」というのはやはり真実です。セクシーな意味だけでなく、お互いの衣服や肌、髪の手触りなどから相手が「本当はどんな人か」の情報は、すぐにわかるものです。視点を変えてみると、こんな考え方もあります。

    たとえば平安時代の貴族の女性が肌だけでなく髪の長さや美しさを重視されたのは、長い髪を美しく、健康に保ち続けることには手間暇やお金がかかるものだから。おまけに一朝一夕には効果が出せないので、女性としてのたしなみの深さまで計り知られる場所だったからなんですね。

    結婚のお誘いを引き出すには、体の愛情表現がポイント?!

    さて平安時代も彼の気持ちを、正式な結婚を決意させるまでに高められるかは、女性としての大きな勝負所でした。セックスに到るまでの心理的な抵抗感が少ない時代であればあるほど、ライバルは多くなります。しかし、関係初期のセックスに限っていえば、「何をするか(ラブテクニック的な意味で)」よりも、「誰とするか」ほど大事なものはないのではないでしょうか。結局、身体の合う・合わないとは本能的な絶対的なものです。

    月夜

    また、正式な結婚ができるか、それとも時々会う程度の恋人的な存在で終わってしまうかどうかは、男性が三日連続で通ってきてくれるかにかかっていました。三日連続で会える、つまり飽きずにセックスできる相手というのはかなりハードルが高い気がしますが、それだけ身体が合う相手以外は、とてもじゃないけど長くは続かないよ…というのが平安の人の教えなんですね。恋愛と結婚は別といいますが、どちらも自分の身体と心が「相手に運命を感じられるかどうか」にかかっていると思います。

    現代の外国(とくに欧米・南米)の恋愛文化の多くには、現代日本のような告白文化はありません。気になる人だから早いうちにキスやセックスをしてみて、その時のフィーリングを重視して、付き合える相手かどうかをお互いに決めるという感覚です。その先駆けが、貴族だけでなく、庶民の間でも日本の平安時代には行われていたようです。

    セックスを特別視しすぎないこと。さらに「好き」という気持ちを言葉だけでなく、身体でも十分にお相手に伝えられるよう、本能的なセンスを磨くのは大事なことではないでしょうか。

    著者:堀江 宏樹(ほりえ ひろき)
    著者:堀江宏樹

    作家・歴史エッセイスト。古今東西の恋愛史や芸術・文化全般などについての執筆活動を続けている。

    最近の出版物としては、原案・監修を務める『ラ・マキユーズ ヴェルサイユの化粧師』(KADOKAWA)のコミック第1巻が発売中。『 本当は怖い世界史 』シリーズ最新刊の 『愛と欲望の世界史』(三笠書房)も好評発売中。

    堀江宏樹さんTwitter⇒https://twitter.com/horiehiroki

     撮影:竹内摩耶

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