出産後、セックスでイケなくなったら…（オーガズムカウンセリング第5回）

今回の相談「出産後、セックスでイケなくなりました」

Ｑ.『出産してから、セックスをしてもイクことができなくなりました。出産前は毎回気持ちよくイクことができたのですが…もう諦めるしかないのでしょうか？』

産後にセックスで感じられなくなる？

こんにちは。レディース予防医学指導士の山本尚恵です。
出産を経験すると、女性の体は大きく変わります。妊娠で大きくなった子宮は出産を終えると急激に縮み、乳房では母乳が作られます。
また、ホルモンバランスにも変化が生じます。中には相談者さんのように産後、セックスの感じ方が変わったという人もいます。なぜ、そのようなことが起こるのでしょうか。

産後のセックスで感じなくなる原因は

出産前は毎回イッていたのに、産後のセックスではオーガズムを感じられなくなった――その主な原因は、出産により骨盤底筋群がダメージを受けることにあると考えられます。
骨盤底筋群とは文字通り、骨盤の底部にある筋肉群のこと。子宮などの臓器を支えるほか、排尿や排便、膣のコントロールを行う役割を果たしています。

妊娠～出産の期間は、この骨盤底筋群への負担が、非妊娠時の何倍にもなる時期です。妊娠中は、大きくなった子宮やお腹の赤ちゃん、羊水、胎盤など、普段の何倍もの重さを骨盤底筋群が支えています。これだけでも大きな負担ですが、さらに出産時には、赤ちゃんが産道や膣口を押し広げて出てくるため、ダメ押しのように膣周辺の組織が傷ついてしまったり、骨盤底筋群が伸びてしまったりというダメージが加わります。これらの影響で、産後にセックスをする際、感じにくくなる、すなわちオーガズムを得にくくなるということがあるのです。

骨盤底筋群を回復させるには

産後、骨盤底筋群がダメージを受けるといっても、それは一時的なことである場合がほとんどです。人間の体には、元に戻ろうとするメカニズムが働いています。順調に回復が進めば、数ヶ月でほぼ出産前と同じ状態に戻り、セックスをしても以前と同様、快感を得られるようになるでしょう。

ただし、産じょく期（出産直後～産後1ヶ月の期間）に無理をしてしまうと、骨盤底筋群の回復がうまくいかず、膀胱や子宮などの臓器が下がって、尿もれの原因となったり、セックスにも影響が出たりすることがあるようです。そうなってしまった場合、骨盤底筋群を鍛えるのがよいでしょう。

おすすめは、仰向けでひざを立てた姿勢から、お尻を持ち上げるエクササイズ。お尻を持ち上げた状態で息を吐きながら下腹部に力を入れると効果的です。下記の状態で3秒～5秒間ほど静止してから、ゆっくりとお尻を元の位置へ戻します。この一連の動きを3回～5回ほど、無理のない範囲で繰り返しましょう。

また、インナ―ボールを使用した膣トレも骨盤底筋群の回復におすすめです。手軽に始められることから、お試しください。

産後間もない人は、エクササイズをすることでかえって負荷がかかり、骨盤底筋群のダメージが大きくなることがあるので、必ず主治医の指示を仰いでから行ってください。

なお、いわゆる一般的な、上体を起こして行う腹筋運動では、骨盤底筋群を鍛えることはできません。それどころか、下垂している膀胱や子宮に腹圧がかかり、さらに押し出されてしまうおそれがあり、要注意です。

マイナスに捉えず、新しい出発と考えよう

産後、体の状態が変わったといっても、決してそのことを悲観的に捉える必要はありません。出産というのは、それほど大変な作業なのです。また、体の状態以外にも、慣れない育児による疲れがあったり、母乳育児の場合、性的欲求が下がったりという、メンタル面の影響もあります。産後のセックスでイケなくなったのは、体の変化だけが原因ではないかもしれません。

ですが、先ほども言った通り、それらのことは決してマイナスではないのです。「もう一度、新たに快感を得られるようになるチャンスだ」と考えてみてはいかがでしょう。出産を境に、いま一度初々しい関係に戻れたと捉えて、小さなスキンシップの積み重ねを試すなどしながら、パートナーとの新たな関係を構築していきましょう。