みんなで作る!コミカル恋愛小説新連載!!
妄想女子の恋物語『妄カラ女子』≪シーズン1 運命の人に逢うため≫
月〜金 毎日16時更新!
■「妄カラ女子」…spotB・シーズン1〜運命の人に逢うため〜
コミカル恋愛小説『妄カラ女子』。
spotBは、恋に積極的だけどなぜかいつもカラ回りしてしまう「空回りお嬢様」の彩子が主人公。
恋愛模様を交互に月〜金まで毎日更新!
気になる今日の展開は…?
シーズン終了後にはアンケートを実施!
恋の行方を決めるのはアナタ!?ぜひご参加ください!
2015.01/12 up 家出 ●榊川彩子
今日は未由センパイとお気に入りのカフェに行ってきました。
未由センパイは、高校時代のテニス部の先輩で、私の唯一といってもいい親友です。 高校時代から仲の良かった私たちですが、今でも週に一度はカフェ「フェブラリー・キャット」で会っております。
未由センパイはお話の内容もおもしろくて、一緒にいるとついつい時間が経つのも忘れてしまいます。
今日はカフェでとつぜん弾き語りが始まったりして、面白かった。生の演奏って初めて聞いたけど、歌の内容もよかったし、また行ってみたいわ。CDも買ってしまいました。
ただ歌っていた方は……お顔だちも薄くて、何だか少しみすぼらしい感じがしましたけど。
カフェから家には電車に乗って帰るのですが、私は電車に乗るのが大好き。どこに行くにも白いリムジンでの送迎が当たり前だった私は、昔から電車に一人で乗ることに憧れていました。
え、私がナニモノかって? そう、よく聞かれるのですが……私は傘下に商社や銀行、食品関連、工業関係、不動産・金融関係、IT関係……といった多数の子会社を持つ、総合商社の社長の娘。
上にお兄様が二人いる末っ子ということもあって、今まで甘やかされて育ってきたという自覚はあります。お手伝いと執事が何でもしてくれた生活。えっ、それは単に甘やかされたってこととは違う?
……未由センパイにも同じことを言われました。
でも今の私は違います。私、今は家を出て、一人で生活しております。小さな広告関係の会社で、事務のお仕事もしています。
もともと何もかも決められた、そして守られた生活に疑問は持っていたのですが、直接のきっかけは――お父様とお母様にお見合いを勧められたことでした。
たしかに私ももう26歳。お父様とお母様が心配するお気持ちもわかります。でも私、自分の相手は自分で決めたかったんです!
……と思って家出同然で飛び出したものの、公園でダンボールのお家で生活なさっているおじさまたちと仲良くしておりましたら、執事に見つかって家に連れ戻されました。私、あのおじさまたちを見習って暮らしていこうと思っていたのですけれど。
結局、お父様・お母様と話し合った末、私は
・執事を常に側に置いておく
・二年後の私の誕生日までに、結婚を考えている相手をお父様とお母様に紹介する
ことを条件に、一人暮らしをすることになりました。お母様は猛反対なさったのですが、お父様が「結婚するのなら、たしかにある程度の社会経験も必要だろう」と折れて下さったの。
いろいろ苦労することも多い毎日ですけれど、これも運命の人に逢うためだと思えば!
2015.01/13 up カノン ●榊川彩子
乗り換え駅で、駅を降りて街を歩いてみることにしました。ここは日本でも有数の繁華街。家族と暮らしていたころは、こんな街を歩く娘は不良!
っていわれたけれど、今はもう平気。あぁ、一人暮らしって素敵だわ!
あら、あの方、かっこいいわ。お兄様たちみたいにカタい印象がなくて、自然体でお付き合いできそう。でもあのジーンズ、ところどころ破れていて……新しいものを買うお金がないのかしら。何か夢を追っていて、そのために節約を強いられているのかもしれないわ。
あ、こちらに近づいてくる。私の視線に気がついたのでしょうか。
……え、これからお茶を一緒に?
でも私、一人暮らしですからあまり無駄遣いをしないようにしておりまして……え、おごって下さるの?
初対面の私にお茶をおごって下さるなんて、なんていい人なのかしら!
ご自身はきちんとしたお洋服も買えずにいるというのに。あぁ、お顔も心も美しい方というのはいらっしゃるのですね。
はい、私、この街は不案内ですから、どこでもついていきますわ。
……あら、何だかどんどん道が暗くなっていきますわね。この奥にお店があるのかしら。お店というよりは、キラキラしたネオンサインつきの建物がちらほら見えますけど。
そのとき、私の視界にすらりとした長身の男性の影が入りました。
まごうことのないその姿は……榊川家の執事・瀬野!
「申し訳ございませんが、このお方がどなたかわかっておいでですか?」
瀬野は私と一緒にいた男性に、そっと耳打ちしました。男性の顔がどんどん青くなっていきます。瀬野の口からは「ゴクドーの」とか「小指が」とか聞こえましたけど、何のことでしょう。
男性は瀬野の言うことを全部聞かないうちに、「ごめんなさぁぁぁいっ!」と私ではなく瀬野に謝って、走っていってしまいました。
「ちょっと、瀬野!」
何が起こったのかよくわからないながらも、私は瀬野に対して怒りをあらわにしてやりました。
じつは以前にも、何度もこういうことはあったのです。いい雰囲気でいる私と男性の間に瀬野が割って入って、二人の仲を裂いてしまうことが。瀬野は運命の男性との出会いを手助けするつもりだと言っていますが、私には邪魔をしているようにしか見えません!
「お嬢様、僭越ながらご指導させていただきます」
瀬野は私に向きなおりました。
出ましたわね!「執事のご指導タイムが!
あぁ、いつもの「パッフェルベルのカノン」が聞こえてきました……
「お嬢様、あのような身なりの男についていったら、どのようなことになっていたかおわかりですか? あの男は繁華街できょろきょろしていたお嬢様を見て、たやすく籠絡できると考えたのですよ」
「ろ、籠絡って何よ……?」
「この場合は、お嬢様を○○して××した上でさらに△△することです」
「………………っっ!」
「お嬢様は守られてお育ちになったから、相手を疑うということをご存じない。お一人暮らしをなさっているのです。少しは警戒心というものを……」
「も、もうっ、わかったわよ。って! な、なんで瀬野がここにいるのよ?」
「偶然でございます。私もたまには繁華街で羽を伸ばしたくなるのです」
「のわりにはきっちりスーツ着こんでますけど〜!」
「これが私の普段着でございます」
「もう帰るわ……!」
「執事のご指導タイム」が終わると、私は瀬野に背を向け、駅を目指して歩き出しました。
2015.01/14 up 榊川家の執事 ●瀬野清彦
ふぅ、お嬢様は本当に危なっかしい。何かあったら、私はお父様の榊川孝造様に顔向けができません。
孝造様は私が実の父よりも尊敬するお方。この身を捧げて一生お仕えするつもりです。
孝造様との出会いは私がまだ小学校に入るか、入らないかのころ。事業に失敗した父に孝造様は多額の資金援助をして下さいました。それで私たち家族は路頭に迷わずに済んだのです。
その後私は順調に進学し、一流といわれる国立大に入学。当初は孝造様の関連企業とはまったく関係ない職に就いておりましたが、孝造様への尊敬の念は減ずることなく、それどころか日々耳にする榊川関連企業躍進のニュースで増していくばかり。
私はやはり孝造様のお役に立ちたい……そう思い、関連企業に転職しようとしたところ、なんと孝造様が私のことを覚えていて下さり、会社で働くのではなく、榊川家の執事にならないかと仰って下さったのです。
私はすぐにイギリスに留学し、執事のノウハウを身に着けて帰国、こうして榊川家にお仕えすることになりました。
私は執事の仕事に喜びを感じ、公私の別なく榊川家のために尽力しております。34歳という、世間では婚期を逃したと思われがちな年齢ではありますが、そもそも私は榊川家のためなら一生独身でも構わないと考えております。
孝造様が目の中に入れても痛くないと思うほど可愛がっていらっしゃる彩子お嬢様は、今年で26歳。本来ならそれなりのお相手がいてもおかしくないお年頃です。ですが末っ娘育ちでいつまでも少女気質が抜けないのか、そのような話がお嬢様の口から出ることもなく……。
そこで孝造様は奥様と計らい、お見合いをさせることになったのです。
お嬢様はこれに大反発。結局一人暮らしをすることになりましたが、孝造様はそれならそれで社会勉強になると思われたようです。その上でお嬢様がこれぞというお相手を見つけるのであれば、それでいいだろうと。高校進学のときも社会勉強のためと、私立の進学校とはいえ、庶民と同じ高校に通わせましたし、孝造様は本当に寛大なお方です。
もちろん、寛大であることと娘への愛情は反比例することはなく……私は孝造様から、お嬢様のお一人暮らし用の家の支度から、就職先の会社の手配、日々の安全管理まですべてを任されました。会社については、お嬢様はご自身で面接を受け、採用されたと考えていらっしゃるようですが、じつは……私が一肌脱がせていただきました。
安全管理に関しては、もっとも注意しなければいけないのが、やはり色恋に絡むあれこれです。ただでさえ世間知らずのお嬢様が、くだらない輩の毒牙にかかることのないように、私は執事としてご指導させていただいております。……一応、これでも若い頃はそれなりに恋愛を謳歌した経験はございますので、男心についてはよく理解しているつもりです。
私は孝造様の海にも増して広いお心を、不肖の身ながら体現するべく、お嬢様のために粉骨砕身する所存でございます。
2015.01/15 up チャンス!? ●榊川彩子
家に着くと、私はさっそくカフェで買ったCDを流しました。
愛する女性への切ない恋心や、幸せなラブソング……あぁ、私もこんな恋愛をしてみたいわ。こんなふうに男性から愛されてみたい。
とくに気に入った歌詞は、「きみが生まれてきた奇跡を、僕の隣にいるときめきを、このキスで伝えたいよハッピーバースデイ」。――誕生日にこんなふうに祝ってもらえたら、どんなに幸せかしら。こんなふうに言って下さる男性を、私は2年後の誕生日にきっとお父様・お母様に会わせてみせるわ。
肝心の歌っていた方は、何となくみすぼらしい感じがしましたけど……でも、こうやって何度も歌を聴いていると、みすぼらしいのにこんなに一生懸命思いを伝えようとしていることが、……何だか、こう……いとおしくなって……くるような。
これでお顔だちもきりっとしていらっしゃったら、ここまでの切実さはなかったんじゃないかしら。
はっ……これはひょっとして……恋!?
ままま、まさか。だって今日会った、というか見かけたばかりですのよ。ろくにお話もしていないし……
……あら、これは何かしら。CDケースに何か紙が挟まっていますね。
次のライブのおしらせ? 弾き語りを、ほかの場所でもするんですのね。
ふぅん、月に何度もやっていらっしゃるんだ。今日みたいなカフェのほかにも、ライブハウスや路上ライブで……ライブハウスってどんなところなのか、よく存じ上げないですけど。
「チケットの予約はこちらへ」って、こっ、これはメールアドレス! これは予約とはいえ、お近づきになれるチャンスじゃないかしら!
私ひとりでは何となく怖いから、未由センパイも誘ってみよう。未由センパイは普段は面倒くさがりだけど、誘うと腰を上げてくれるタイプだから、きっと一緒に来て下さるわ。
メール送信後、30分も経たないうちに……
「ありがとうございます。前売りで2枚ですね!」
何て早いお返事なのでしょう! こんなにすぐに返事が来るなんて……この方――中村宗介さんは、私に好意を……お持ちなのではないでしょうか。
こんなときは、不本意だけれど瀬野の意見を聞くに限ります。私は瀬野を呼び出しました。
「執事のご指導タイム」テーマ曲・パッフェルベルのカノンともになぜか5分で到着した瀬野は、私のスマホを覗きこみました。あ、瀬野の首すじ、いい匂い。でも今はそれどころじゃありません!
私はこれまでのいきさつを述べてから、やりとりしたメールを瀬野に開いて見せました。
「失礼ですが、相手がしがないミュージシャンでしたらチケット予約の連絡には喜んですぐお返事してくるでしょう。恋愛感情とは無関係かと」
瀬野は「しがない」を強調しつつ言いました。
「それに一度カフェで演奏を聞いただけのお相手なら、お嬢様のことを覚えているかどうかも怪しいものでございます」
……っっっ! ……悔しいですが、たしかにその通りかもしれません。
「わ、わかったわよ! もういいわっ!」
瀬野は「何かありましたらまたお呼びつけ下さい」と言い残し、部屋を去っていきました。
2015.01/16 up 感動 ●榊川彩子
ライブ――私には「弾き語り」というほうがしっくりくるのですが――は、初台の『クロックワーク・ムーン』というライブハウスで行なわれました。
私も未由センパイもライブハウスなんてところに入るのは初めてでしたから、入るときには少しだけ足が震えてしまいました。
出演者は何人かいたようでしたが、宗介さんはその中でも最初の出番でした。
カフェでの演奏のときよりも、宗介さんは少しだけ格好よく見えました。もしかしたらここ数日、私がずっと宗介さんの曲を聴いて思いを膨らませていたから、よけいそんなふうに見えてしまったのかもしれませんが……。
と、とにかく、ライブハウスの明るい照明に照らされて、みすぼらしさが浮き立ってしまいながらも、それに負けずに切々と弾き語る姿に、私は心を打たれました。
でも、未由センパイいわく、「べつに、彩子がいうほどみすぼらしくないと思うよ、あの人」って。
「痩せていて、いかにも「ソーショク系」っぽくて、服装とかにも無頓着そうで、弾き語り系ミュージシャンにはよくいそうなタイプじゃない?」とのことです。もっとも未由センパイの知識と妄想内でのミュージシャンだとのことですが……。私、ひょっとして、また何か勘違いしてしまったでしょうか。
それでも、宗介さんの歌が素晴らしかったことは勘違いしようのないことでした!
次の方はバンド形式で音も大きく、私や未由センパイの好みとは言いがたかったので、私たちはライブハウスを出ることにしました。
駅に着くと、未由センパイはとつぜん、「大事なものを落とした!」と大慌てなさいました。何なのか聞いても教えて下さいませんでしたが、慌てぶりからして相当大事なもののようです。
私たちはライブハウスに帰って、どうやらノートの形をしているらしいソレを探しましたが、結局、見つかりませんでした。もしかしたら宗介さんに会えるかも……なんて期待も抱きましたが、それもありませんでした。
私たちはまた駅に戻り、未由センパイは顔を青くしたまま帰りの電車にお乗りになりました。
でも私は……どうしてもあきらめられませんでした。せめて一言なりとも、この感動を、素敵な歌でしたということを、宗介さんにお伝えしたい。私は今度はひとりで、もう一度ライブハウスに足を運びました。
ライブハウスからは人がどんどん出てきていました。どうやらライブがすべて終わったようです。
私がそこで会ったのは……
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