本当にあった!ラブ物語

【第九話】快感の水平線

公開日: 2020/04/06  最終更新日: 2020/08/06
本当にあった!ラブ物語
     
    第一章 甘いセキララ

    6つのケーキと6人の顏がテーブルを囲んでいる。「やっぱケーキは、女友達と食べるに限る!」雪乃は、お気に入りのシフォンケーキにフォークを伸ばすと、恋人のグチをこぼし始めた。

    それを皮切りに恋愛の話になり、話は徐々にきわどくなっていく。私にも彼氏がいるのだけれど、つい、聞き役に回ってしまう。

    第一章 甘いセキララお悩み解決バナー

    (みんなが言っているセキララな事情…、正直、よく分からない…)そんな劣等感が心の中に芽生えかけた時、「実は私、これ使ってるんだ」早苗が、周りのテーブルを気にしつつ、スマホの画面を見せる。

    「えっ!?」私も含めた5人がほぼ同時に息をのむような声を出したその瞬間には、まさか、自分が同じ物を手にするなんて想像もしなかった。ましてや、自分のカラダがあんなことになるなんて…。

    第二章 新しい世界のドア

    みんなと駅で別れて、自宅へと歩きながら、早苗を思い出す。「ひとりHって、男の人がするものだと思ってたんだけどね。実は中世から、メンタルケアとか安眠のために女性もしてたらしいよ、欧米とかでは」

    そんな話をしながらバイブの画像を見せる早苗は、照れくさそうでもあったけれど、満足気で艶やかだった。そんな彼女を見ながら、私の脳裏には、数カ月前に彼氏から言われた「智香もオナニーしたらいいのに」という言葉が蘇った。

    (正直、彼とのセックスに満足しているかと言われると、即答できない。それに私はイクという感覚自体、分からない…。だから、こんなに早苗の話が気になるのかな…)

    帰宅後、私はいつの間にか、早苗が見せてくれたバイブを検索していた。

    「不満だって言ってるだけじゃ、何も変わらないし…」自分の声で背中を押して、購入ボタンをタップする。

    ―数日後。早めに寝室に向かうと、届いたばかりの箱から取り出したバイブを手にして、ベッドに座る。

    少し震える手で、ワンピースパジャマの裾を上げ、脚の付け根に、晴れた夏の水平線のようなマリンブルーの先端を当てる。

    ヴィーン…スイッチを入れた瞬間、振動に驚くけれど、すぐにそれは心地よさへと姿を変えた。

    第二章 新しい世界のドア

    「ん…」無意識に吐かれる自分の息に戸惑い、しかしそれが同時に緊張をほぐし、私は、快感に身を委ねる。

    そして、カラダが求めるままに、水色の振動を泉の入り口に当てた。「ぁぁあ…」吸い込まれるように、絶妙な感触が侵入してく。すっかり泉の中に納まった振動に、少しの間カラダを馴染ませると、自然と右手が動いてしまう。

    「はぁぁ…」荒い吐息にくちゅくちゅと湿った音も重なると、右手の動きはスピードを増した。

    (やだ…止まらない…)右手が脳の指令とは無関係に動き、意識が一瞬飛んだような感覚に陥る。

    (これが…、イクってこと…?)全身が脈打つ中で、確信ともいえる疑問を投げかけた。

    第三章 その先のドア

    「ねぇ、カズ君、前に、私もひとりHした方がいいよって言ってたでしょ?でね…、一緒にイキたくて、私…練習したんだ」

    恋人の和彦とホテルに入ると、恥ずかしさがこみ上げる前に、一気に言葉にした。その言葉に興味を示した和彦に、シャワーを浴びた後、ベッドの上で、こっそりと持ってきたバイブを見せる。

    「色とかデザインとか、さわやかだね」と、彼は意味深な笑顔を向ける。「うん。マリンビーンズっていって、こないだ早苗が教えてくれて…」

    第三章 その先のドア

    「それで、ひとりで練習してくれたんだ?嬉しいなぁ。可愛いなぁ、智香は」私を抱き寄せ、彼はマリンビーンズを手に取り、「今度はふたりで使おうよ」と耳元で囁いてスイッチを入れる。

    その振動を、まずは私の左の胸に当て、右の乳首を口の中で転がした。「ぁぁぁ」声を漏らす私の全身に、彼は、振動と舌を並べて這わせていく。

    そして、膝から太ももへと向かうと、「智香、濡れてるよ」という声と同時に、泉の入り口をバイブの先端で刺激した。

    「んんっっ」思わず身をよじると、「きもちいいんだね」とキスをしながら、彼は、少しずつ、震える泉に沈ませていく。

    「すごい…」思わずこぼれた自分の言葉が耳に入ると、さらに快感が増し、「もっと…お願い、もっと…」と腰が動いてしまう。

    第三章 その先のドア

    「あぁ、こっちが我慢できないよ…」和彦は、ジュポッと音を立てながらバイブを抜くと、代わりに彼自身を一気に挿入した。

    「あぁぁ…」私は、泉の中で、さらに深く快感が広がるのを感じる。

    「すごい…智香の中、熱い…きつい…」その言葉に疑いの余地がない表情を見せる彼に、泉の中はさらに熱を増す。

    第三章 その先のドア

    「ねぇ…カズ君…ダメ…ダメになっちゃう…」何度か体位を変えた後、私を下から突き上げる彼の胸を、しがみつくように掴む。「いいよ…智香、そのまま…、俺も…俺も…」

    息も腰の動きも激しさを増す彼の上で、私たちは、同時に「…イクッ」と絞り出して、そのまま彼の胸に脱力した。

    第四章 ドアの、向こう側

    ―1ヵ月後。「帰ったらまず、しようよ」買い物から私の自宅に向かう途中の信号待ち、和彦が私の腰に手を回しながら、囁く。

    第四章 ドアの、向こう側

    マリンビーンズは、その後、彼と一緒によく使うようになった。イク感覚を覚えて、私も、以前よりもずっと積極的で大胆になっているような気がする。

    それで盛り上がるからなのか、セックスの回数は増え、ベッドの中でも外でも、お互いに以前にも増して優しくなっている。

    「気が早いでしょ!」笑って彼に視線を向けると、私は、回された手をギュッと握った。

    ~第九話・完~

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