6つのケーキと6人の顏がテーブルを囲んでいる。「やっぱケーキは、女友達と食べるに限る!」雪乃は、お気に入りのシフォンケーキにフォークを伸ばすと、恋人のグチをこぼし始めた。
それを皮切りに恋愛の話になり、話は徐々にきわどくなっていく。私にも彼氏がいるのだけれど、つい、聞き役に回ってしまう。
(みんなが言っているセキララな事情…、正直、よく分からない…)そんな劣等感が心の中に芽生えかけた時、「実は私、これ使ってるんだ」早苗が、周りのテーブルを気にしつつ、スマホの画面を見せる。
「えっ!?」私も含めた5人がほぼ同時に息をのむような声を出したその瞬間には、まさか、自分が同じ物を手にするなんて想像もしなかった。ましてや、自分のカラダがあんなことになるなんて…。
みんなと駅で別れて、自宅へと歩きながら、早苗を思い出す。「ひとりHって、男の人がするものだと思ってたんだけどね。実は中世から、メンタルケアとか安眠のために女性もしてたらしいよ、欧米とかでは」
そんな話をしながらバイブの画像を見せる早苗は、照れくさそうでもあったけれど、満足気で艶やかだった。そんな彼女を見ながら、私の脳裏には、数カ月前に彼氏から言われた「智香もオナニーしたらいいのに」という言葉が蘇った。
(正直、彼とのセックスに満足しているかと言われると、即答できない。それに私はイクという感覚自体、分からない…。だから、こんなに早苗の話が気になるのかな…)
帰宅後、私はいつの間にか、早苗が見せてくれたバイブを検索していた。
「不満だって言ってるだけじゃ、何も変わらないし…」自分の声で背中を押して、購入ボタンをタップする。
―数日後。早めに寝室に向かうと、届いたばかりの箱から取り出したバイブを手にして、ベッドに座る。
少し震える手で、ワンピースパジャマの裾を上げ、脚の付け根に、晴れた夏の水平線のようなマリンブルーの先端を当てる。
ヴィーン…スイッチを入れた瞬間、振動に驚くけれど、すぐにそれは心地よさへと姿を変えた。
「ん…」無意識に吐かれる自分の息に戸惑い、しかしそれが同時に緊張をほぐし、私は、快感に身を委ねる。
そして、カラダが求めるままに、水色の振動を泉の入り口に当てた。「ぁぁあ…」吸い込まれるように、絶妙な感触が侵入してく。すっかり泉の中に納まった振動に、少しの間カラダを馴染ませると、自然と右手が動いてしまう。
「はぁぁ…」荒い吐息にくちゅくちゅと湿った音も重なると、右手の動きはスピードを増した。
(やだ…止まらない…)右手が脳の指令とは無関係に動き、意識が一瞬飛んだような感覚に陥る。
(これが…、イクってこと…?)全身が脈打つ中で、確信ともいえる疑問を投げかけた。
「ねぇ、カズ君、前に、私もひとりHした方がいいよって言ってたでしょ?でね…、一緒にイキたくて、私…練習したんだ」
恋人の和彦とホテルに入ると、恥ずかしさがこみ上げる前に、一気に言葉にした。その言葉に興味を示した和彦に、シャワーを浴びた後、ベッドの上で、こっそりと持ってきたバイブを見せる。
「色とかデザインとか、さわやかだね」と、彼は意味深な笑顔を向ける。「うん。マリンビーンズっていって、こないだ早苗が教えてくれて…」
「それで、ひとりで練習してくれたんだ?嬉しいなぁ。可愛いなぁ、智香は」私を抱き寄せ、彼はマリンビーンズを手に取り、「今度はふたりで使おうよ」と耳元で囁いてスイッチを入れる。
その振動を、まずは私の左の胸に当て、右の乳首を口の中で転がした。「ぁぁぁ」声を漏らす私の全身に、彼は、振動と舌を並べて這わせていく。
そして、膝から太ももへと向かうと、「智香、濡れてるよ」という声と同時に、泉の入り口をバイブの先端で刺激した。
「んんっっ」思わず身をよじると、「きもちいいんだね」とキスをしながら、彼は、少しずつ、震える泉に沈ませていく。
「すごい…」思わずこぼれた自分の言葉が耳に入ると、さらに快感が増し、「もっと…お願い、もっと…」と腰が動いてしまう。
「あぁ、こっちが我慢できないよ…」和彦は、ジュポッと音を立てながらバイブを抜くと、代わりに彼自身を一気に挿入した。
「あぁぁ…」私は、泉の中で、さらに深く快感が広がるのを感じる。
「すごい…智香の中、熱い…きつい…」その言葉に疑いの余地がない表情を見せる彼に、泉の中はさらに熱を増す。
「ねぇ…カズ君…ダメ…ダメになっちゃう…」何度か体位を変えた後、私を下から突き上げる彼の胸を、しがみつくように掴む。「いいよ…智香、そのまま…、俺も…俺も…」
息も腰の動きも激しさを増す彼の上で、私たちは、同時に「…イクッ」と絞り出して、そのまま彼の胸に脱力した。
―1ヵ月後。「帰ったらまず、しようよ」買い物から私の自宅に向かう途中の信号待ち、和彦が私の腰に手を回しながら、囁く。
マリンビーンズは、その後、彼と一緒によく使うようになった。イク感覚を覚えて、私も、以前よりもずっと積極的で大胆になっているような気がする。
それで盛り上がるからなのか、セックスの回数は増え、ベッドの中でも外でも、お互いに以前にも増して優しくなっている。
「気が早いでしょ!」笑って彼に視線を向けると、私は、回された手をギュッと握った。
~第九話・完~
「もっと中で感じたい」「Gスポットの感度を磨きたい」「さらに深い快感を探求してみたい」そんな多くの女性のお望みにお応えする『マリンビーンズ』。今までにない動きで、様々な快感レベルをアップしてみませんか?
肌の細胞すべてに、体の動きすべてに、心が宿る。 心が宿った肌を合わせれば、幸せが身に沁みる。 愛する幸せ、愛される幸せ、女性としての幸せ、人として生きる幸せ。
いろんな幸せが宿るセックスが、日々、たくさん生まれますように。 …そう祈りながら、小説の執筆をしております。
⇒【はづき】さんの官能小説はこちら
この物語の元になった体験談はこちら!
(ゆーたんさん / 26歳 / 会社員)私は彼との付き合いが長いのですが、セックスでイク感覚が掴めず、彼の方がいつも先にイッてしまい、セックスに満足できずにいました。何やら間違いを起こす前に私もオナニーしてみよう!と思い…