『恋欠女子とバーチャル男子』ストーリーA1

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『恋欠女子とバーチャル男子』ストーリーA1

みんなで作る小説!ストーリーA
恋欠女子とバーチャル男子「AI」との恋愛応援物語



タイトルアンケート

■恋欠女子とバーチャル男子ストーリーA

みんなで作る!恋愛応援小説『恋欠女子とバーチャル男子〜AIがあなたのお悩み解決します〜』が新連載としてスタート!アンケートの結果で行方が変わる、恋愛模様に目が離せない!

不思議なアプリ 「バーチャル男子」の開発秘話を公開します!



2017.2.6 up 「もちろんです。やらせて下さい!」

挿絵


 私は、伊川咲。


 世間は私のような女のことをリケジョと呼ぶらしい。


 大学院で工学系の博士号を取得した後、大手ソフトウェア会社にエンジニアとして入社。大学の頃から研究対象にしてきた人工知能の開発に、ずっとたずさわってきた。


 自分のいうのもなんだけど、色気はまったくない。恋愛経験もまったくない。男性が苦手というわけではないけれど、恋愛したい気持ちよりも、研究が楽しいという気持ちのほうが勝っていて、恋愛に今ひとつ興味が湧かない。


だからというべきなのか、メイクにもファッションにもあまり興味はない。同じ空間にいる人に不快感を与えなければ、それでいいんじゃないかと思っている。


 周囲の女友達や、二人で一緒に住んでいる妹の結(ゆい)は「そんな生活で寂しくないの?」と驚く。


「恋愛はいいものだよ〜。人生に潤いをもたらしてくれる!」


「恋愛体質」を自称して憚らない結は、したり顔でそんなふうに言う。


 でも、私の人生の潤いは恋愛じゃなくて研究や仕事がもたらしてくれるし、それを潤いじゃないというのなら、べつに枯れていたって構わない。女は恋愛してなんぼ、なんて余計なお世話だ。


 そして私は今、まさに、私の潤いの源泉である仕事でステップアップを果たそうとしていた。


***


「プロジェクトマネージャー?」


 CTO(最高技術責任者)の荒木さんに呼び出された私は、目を丸くした。


 無精ヒゲで無愛想。言葉遣いは荒いが、ひらめきと勘でさまざまなことに突破口を見出してしまう天才タイプの彼は、外資系の他社からヘッドハンティングで引き抜かれた人物だ。


この会社に所属するようになる前から技術系の雑誌で何度も見かけたことがあるせいで、私も一目置いている。


年齢は、29歳の私よりも6歳年上の35歳。結婚はしてないようだけど、理由はわかる。


この業界の人には少なくないが、一度研究に没頭すると周囲が見えなくなるのだ。家庭なんて持ったら、あっという間に崩壊するだろう。私も人のことはいえないけれど。

「そう。現在ウチが開発を進めている人工知能を、一般のユーザー向けにスマートフォンアプリとしてリリースしようと考えている。目的はフィードバック獲得。それをもとに人工知能の精度を上げていく。そのプロジェクトの舵を取ってほしい」


 胸が詰まって、何も言えなくなった。


 もちろん、嬉しかったからだ。


 何でもいい。ひとつのプロジェクトをマネージャーとして引っぱっていくことは、

昔からの夢だった。マネージャーになってこそやっと一人前だという考えがあったのだ。


「もちろんです。やらせて下さい!」


 私は荒井さんにぺこりと頭を下げた。


 認められた――そう思うと、胸がいっぱいになって涙まで出てきそうだった。




2017.2.7 up 「愛のある人工知能にしよう」

挿絵


 荒井さんやほかの役員、それにプロジェクトのメンバーとの何度かの会議を経て、人工知能は、「恋愛や人間関係などに悩む女性に向け、その人に最適な男性像として映像つきで現れる」ものにしようと決まった。


人工知能には名前もつけることにした。文字通りの「AI=artificial intelligence」。でも呼び方は「アイ」。「愛のある人工知能にしよう」という、荒井さんらしからぬ

荒井さんの一言で決まった。


 プロジェクトが始まると、アルバイトなどで高校生から50代、60代までさまざまな男性が集められ、専用ソフトウェアと彼らとの対話がすべて記録された。


多くの男性たちからものの考え方を情報として取得し、アプリを利用する女性に応じて、その情報の結びつけ方や組み合わせ方を変えていく。こうすることで多彩な「人格」が生まれるのだ。


 プロジェクトは順調に進んでいった。


 しかし、進めば進むほど、何かが物足りないと思うようになった。


 何か、が何なのかはわからない。ひどく曖昧で漠然としているが、あえていうなら「人らしい柔軟性やあたたかみ」だろうか。


 確かにテストタイプのアイは、設定した女性の人物像やその質問に対して、「正しい」ことは返す。でも正しいだけで、深みや面白味がないように感じるのだ。


 間違ってはいない。でも、これを正解にしてもいけない気がする。


 最初は私がぼんやり感じているだけかと思っていたが、荒木さんや、入社以来、ライバルとしても協力者としても切磋琢磨しあってきた同僚でサブマネージャーの和田くんも、そのことを指摘した。


 和田くんは世話女房タイプで、どんなプロジェクトでも彼をサブマネージャーにつけると失敗しないといわれていた。


同期入社なだけに、昔はそれを悔しく感じていたが、自分がマネージャーになった今は頼もしい。プログラムの設計からスケジュール管理まで、細かいところに至るまでおろそかに考えない慎重さは、本当に重宝する。


 私はさらに具体的な意見を得るため、友人や家族にテストタイプのアイをダウンロードしてもらった。


 彼女たちの意見はおおむね一致していた。


「もっと癒してほしいのに、正論ばかり言うので疲れる」


 癒してほしい――。


 私は、これまでの人生で一度も誰かや何かに癒してほしいと思ったことがなかった。癒しなんて、外部にアウトソーシングすることじゃないと思っている。自分だけの心の問題だ。


私がそう話すと、結は呆れたように言った。


「お姉ちゃんはさー、恋愛をしてないから、そういう機微がわからないんだよ」


(恋愛か……)


私はこれまで恋愛を知らずに生きてきたことに、初めてわずかな疑問を覚えた。




2017.2.8 up 「その気もないのに悪いじゃない」

挿絵


 恋愛への興味なんて、持とうと思って持てるものではない。


 でも、恋愛したいと思う女性の心理は、例えば姿かたちを真似てみることで幾分かわかるのではないか。


 私は化粧をしたり、スカートを履くのに挑戦することにした。思いついたら行動が早いのは、私の長所だ。


 その結果――。


 会社で、すっごく笑われた。悪い意味で。たった一日で。


 どうしてなのかよくわからないが、いろんな場面を総合して考えると、どうも派手すぎたらしい。


確かにアイシャドウに赤、黄、青のラメの三色使いをしたりだとか、水色のエナメルのスカートや、紫のスパンコールで飾られたピンヒールを履いていったりしたけれど。


「あああ、お姉ちゃん! そういう派手すぎるファッションで失敗するのは、せめて中学生の頃にしてほしかった!」


 帰宅後に顔を合わせた結は、私がこの服装をしている理由を聞くと、がっくりと膝をついた。


「なんで? ファッション誌とか見ると、海外の女優さんたちもこんな格好してるじゃない」


「あれは! 非日常の世界に生きている人たちだから!」


 どうやら、参考にしたものが悪かったようだ。


 ともあれ、結のおかげで私はそこそこ「まとも」な格好にシフトチェンジできたのだった。


***


 人間とは、いや、男とは現金なものであると思わざるを得ない。


 女らしい格好を始めた私に、会社の幾人かの男性が声をかけてきたのだ。


「伊川さん、今度食事に行かない?」


「よかったら、二人で行きたいところがあるんだけど」


「今まで気づかなかったけど、肌、きれいだよね」


 こんな私でも、そこに下心があることは感じ取れた。


私が突然趣味を変えたことを「隙」として見ているのは明らかだった。私だって、いつも使っているアプリケーションの仕様が突然変わったら、ハッキングできる余地がないか調べてみたくなるし、仕様が変わってすぐだと実際に結構見つかるものだ。


同じエンジニア畑の男性は声をかけてこなかった。さすがに遠慮のようなものがあるのかもしれない。


「えー、なんで断るの? せっかくだから食事ぐらい行ってみたら。そのほうが女性の気持ちももっとわかるかもよ」


 会社であったことを結に話すと、彼女は不思議そうな顔をした。


「その気もないのに悪いじゃない」


「じゃあ、食事代を半々にしてもらったら? そもそも、最初の『食事に行きませんか』をOKするのは、『あなたのこと、まぁ嫌いじゃないです。だからもうちょっとお話してみましょうか』っていう程度の意味だって。一度目でダメだと思ったら二度目からは断ればいい。相手だってそのあたりはわかっているはずだし、わかっていなかったら逆にその男はやめたほうがいいよ。そんなに親しくもないのに最初からいきなり距離を詰めてこようとするヤツに、ロクな男はいないから」


「そういうものかぁ」


「恋愛体質」である結が言うのだから、正しいように思えてくる。


「よし、ためしにOKしてみる」




2017.2.9 up 「恋って、いいものだったんだなぁ」


「あなたのこと、まぁ嫌いじゃないです」は、意外なほどあっさり「恋」になった。


 いちばん驚いたのは自分自身だ。恋愛になんて興味はなかったはずなのに。


 声をかけてくれた中で、アイのイメージグラフィックにいちばん近かった営業部の塩谷さんの誘いを受けた私は、最初の食事で強く惹かれた。


 どこに惹かれたかといえば、ひとことでいえばスマートなところだ。


 どんなときもエスコートしてくれるし、「営業で役に立つから」と話題も豊富。私は時事ネタや芸能ネタは全然興味がなく、それだけにまったくわからないから、同じ業種の人以外とは大抵話が合わない。でも塩谷さんは、営業だからか私たちの業種のことにも詳しかった。それを、ユーモアを交えて話してくれる。


塩谷さんも私のことをよく思ってくれたのか、その後も食事に誘ってもらえた。


断らなかった。


 男性や恋愛に対する耐性がないから、少しのいいところもすごく良く見えるんだろうというのは自覚している。それを差し引いても、好きだという気持ちは大きくなるばかりだった。


 その日は、初めて手をつないだ。一緒に食事をした帰り道、駅までの短い間だった。


 塩谷さんがさりげなく、私の手を取ってくれたのだ。


 ドキドキして、顔どころか体じゅうから火が出そうになった。


 嬉しい。楽しい。わくわくする。胸が高鳴る。まわりの風景がきれいに見える。


 これから水族館に行こう、海にも行こう、温泉にも行こう。これから一緒に楽しい思い出をいっぱいつくりたい。まだ恋人同士でもないのに、そんな話をした。


(恋って、いいものだったんだなぁ)


 しみじみ、そう思った。


「じゃあ、また明日」


 駅で別れるとき、塩谷さんは私の唇にそっと、キスをした。


***


挿絵

「……さん、伊川さんってば!」


 隣のデスクで、和田くんが私を呼んでいた。


「ちょっと、ぼーっとしすぎじゃないか。何度も呼んだのに」


「え、本当に? 全然気づかなかった」


 最近、何度かこんなことがあった。理由は簡単。いつも塩谷さんのことばかり考えていて、上の空になっているからだ。


 もちろん、こんなことではいけないとわかっている。でも、どうしようもできない。集中しようとすればするほど、塩谷さんの顔が浮かんでくる。その途端に、意識がそっちに引きずられていく。


 それでいながら、スマホは四六時中気にしていた。いつ塩谷さんからメールが届くか、気が気ではない。


「まあ、いいや。このタスクなんだけど、今のスピードじゃ間に合わないよ。外部からエンジニアを追加するか、いったんスケジュールを仕切りなおすかしないと」


「……そうだね」


 和田くんがタブレットで見せてくれた進捗表は、遅れを示す赤が目立っていた。


「スケジュールを組みなおそう。私が……」


「いいよ、俺がやる」


 和田くんは彼らしからぬ強い口調で言ってタブレットをひっこめると、デスクに向き直った。


***


 私は、気づかなかった。


 このとき荒木さんが、少し離れた彼のデスクから私を見て、こう呟いていたことを。


「マネージャーに抜擢したのは早かったかな。何があっていきなりあんなカッコを始めたのかはわからんが……どんな理由があろうとも、仕事をなおざりにしてもらっちゃ困る」




2017.2.10 up 「いやな汗が、額から滲み出してきた」


挿絵

<

私の恋は、ひどくあっけなく終わった。


 いや、あっけなく終わってよかったのだ。


 このまま続いていたら、「あっけなく」では済まなかっただろうから。


 アイの人工音声を作成してくれる会社の、担当者との会議を終わらせた後のことだだった。その後、会議室を使う予定はないようだったので、私は資料の整理でしばらく一人でそこに残っていた。


それでも念のため、会議中にドアに表示しておく所属の課と自分の名前は消しておいた。部屋にいても注意されることはないだろうが、何となくそうした。たまには一人で誰にも邪魔されず、ひっそりと仕事をしたい気持ちがあったからかもしれない。


結局、1時間ぐらい長居してしまったと思う。そろそろ戻ろうかと立ち上がりかけたとき、ふいに聞き覚えのある声がした。


塩谷さんだ。


どうやら男性何人かと歩いているようだった。言葉遣いからして同僚だろう。会議室はここだけではなく、周囲にいくつか並んでいる。もうすぐ違う部屋で会議があるに違いない。


「そういえばさぁ、あのエンジニアの女、どうなった? 伊川だっけ。最近、突然女らしくなったヤツ」


 塩谷さんの声ではなかったが、自分の名前が出てきたのではっとした。


「ああ、あれね」


 今度は塩谷さんの声だった。でも、私の知らない軽さを帯びている。いやな汗が、額から滲み出してきた。


「もうすぐ落とせそうだよ」


「マジか」


 ……どういうこと? 私はドアに貼りつかんばかりにして、耳をそばだてる。


「あいつ、今どき恋愛経験ゼロなんだ。人工知能の開発のために女心を知りたくておしゃれを始めたんだってさ。お前、女だろって話だよな。ああいう勉強と仕事ばかりしてきたような女は簡単に落とせると思ってね、ためしに声をかけてみたんだよ。そのへんのゲームをやるよりは、いい暇つぶしになりそうだし」


「ゲームがわりかよ。趣味悪いな」


 別の男性が笑う。


「適当に恋愛ごっこをしたらフるけどね。ああいうの、べつにあんまり趣味じゃないんだ」


 私はその場にくずおれた。その拍子に体がドアに当たって、大きな音が響いた。


 そのドアが、開いた。開けたのは塩谷さんだった。青ざめていた。


***


(やっぱり、その気もないのに食事になんて行っちゃいけなかったんだ)


 私に塩谷さんを責める資格はない。私だって失礼だったと思う。


 結みたいに恋愛経験豊富な女の子だったら、駆け引きとして上手に誘いを受けられたのかもしれないけど、私には土台無理だったのだ。これはきっと、人に誠実にしなかったバチだ。


 本当に強いショックというのは、身体にも影響を及ぼすのだと知った。


 私はその日、就業時間を待たずに退社した。いきなりめまいに襲われ、それがどんどんひどくなっていったからだ。


 家に着くと、熱まで出てきた。お風呂も入らず、とりあえずメイクだけ落としてベッドに潜り込む。


 こんなときに頼りにしたい同居人の結は、昨日から取材旅行に出かけていた。フリーのグルメライターである彼女は、月に何度か地方にまで食べ歩きの旅に出る。


 熱がなかなか下がらないまま、二日が過ぎた。


何とか出社しなければと焦るが、体調はいっこうに回復してくれない。


(せめて病院に……でも、歩けない)


もともとは丈夫なほうだった。こんなにまでなるのは、初めてだった。


あれから、塩谷さんから連絡はなかった。誤解だよと言ってほしい気もしたが、言われたところでもう信じられなかっただろう。最後に会ったときの表情が、すべてを語っていた。


 ふいに、ずっと沈黙していたスマホが鳴った。


 メール受信だ。塩谷さんからだろうか。


 ……違った。


「体調は大丈夫か。ひょっとして、大変なことになっているんじゃないか。もし迷惑じゃなかったら、今から家に行って看病しようか」


 そのメールを送ってきたのは……




シーズン1終了

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