
みんなで作る小説!ストーリーF
恋欠女子とバーチャル男子「AI」との恋愛応援物語

■恋欠女子とバーチャル男子ストーリーF
みんなで作る!恋愛応援小説『恋欠女子とバーチャル男子〜AIがあなたのお悩み解決します〜』が新連載としてスタート!アンケートの結果で行方が変わる、恋愛模様に目が離せない!
不思議なアプリ 「バーチャル男子」の開発秘話を公開します!


2017.6.5 up 「そんな自分は格好悪くて」

別れた昌太郎とは何も起こらないまま、私は「アイ」というAIをつくるIT系の会社でアルバイトを始めた。
仕事の内容は雑務、要するに何でも屋だ。バイトに見せても差し支えない範囲での資料づくりや、ミーティングの準備の手伝いなどが多い。
「アイ」にも興味が湧いたので、それとなく聞いてみると、「すでにリリースされているバージョンなら、社内の人間が自由に使っても構わない」という。
私は昌太郎とのことを誰にも相談していなかった。共通の友人たちとは、進学を機に物理的に遠くに離れてしまったからだ。何も知らない大学の友人に話すのは、なんとなく気が引けた。
(一人で考えていたのでは出てこないアドバイスをもらえるかも)
そう考えて、アイをダウンロードした。
***
現れたアイを前にして、私は呆然とした。
(昌太郎に、そっくり……)
見た目もしぐさも声も喋り方も、何もかも似ている。
具体的なデータなんて何ひとつ入力しなかったのに……これが最先端の技術なんだ。
それでも、アイはひとつだけ昌太郎とは決定的に違うところがあった。
ものをずけずけと言う。
昌太郎はどちらかといえば、自分の考えを強く主張したりしないタイプで、気持ちもあまり表には出さないところがあった。あまり恵まれたとはいえない環境で育ったらしいので、処世術として身についたのだと思う。
こっちの昌太郎、というかアイが本物とは違う性格なのだとわかったのは、私が思わずこんなことを尋ねてしまったからだ。
「ねえ、私と別れようと思ったのは、本当に忙しくなったからというだけの理由なの?」
そうじゃないよ、とアイは首を横に振る。
「忙しくても、好きなら何とかして会おうとするよ。忙しいというのはきっかけにすぎない」
はっきり言われた。
昌太郎によく似たアイの口から出てくるとなおさら、頭を思いきりぶん殴られたような気持ちになった。
「じゃあ、どうして……」
「きみは、根っこの部分では自分のほうが立場が上なんだと思っていなかった?」
アイにそう指摘された瞬間、じん、と背筋が冷えた。
「自分のほうが告白されたからには、ね。そんな感覚、いつかなくなるものだと思っていたけれど、いつまでも消えなかった」
「そんな……」
否定しようとしたが、声が震えた。本当は、自覚があったからだ。でもまっすぐに見つめることはしていなかった。自分の醜さにほかならなかったからだ。
「僕に自分から積極的に会おうとしない理由を、きみは僕の負担にならないようにするためだと言っていた。でも本当は、自分のほうばかり忙しい僕に合わせるのが、癪(しゃく)だったんじゃないの。別れを切り出されても一人で落ちこむだけで追いかけようとしなかったのは、そうするのが無駄だと思っていたからじゃなくて、そんな自分は格好悪くていやだったからじゃないの。
僕はいつしか、そんなきみから心が離れていったんだ」
私はその場にくずおれた。何も言い返せない。ひとこと、ひとことが繰り返し頭に響いた。全部本当だからだ。
「もし僕とやり直したいんだったら、その部分を変えなきゃ。それでももう、手遅れかもしれないけど」
翌日、私は昌太郎にメールを送った。
もう手遅れだとしても、せめて、そんな自分だったことを会って謝りたい。それでも一緒にいられたことに感謝を伝えたい。
昌太郎は、写真スタジオのバイト帰りに少しだけなら会えると返事をくれた。
2017.6.6 up 「今でも大好きです」

「きみは、いつもどこか冷めているみたいで……僕のことなんてそんなに好きじゃないのかと思っていたよ」
待ち合わせをした駅の近くにあったファミレスで、ドリンクバーの紅茶を飲みながら昌太郎は呟いた。私をまっすぐに見ようとはしない。
すでに午後十時半を回っている。夜中じゅう居座ろうとする人と、もう帰ろうとする人とが交替するような時間で、店内は少し騒がしかった。
昌太郎は寂しそうな、切なそうな表情をしていた。そうか、私はきっと、昌太郎にずっとこんな表情をさせていたんだ。でも、気づくことができなかった。
私は昌太郎のほうなんて、見ていなかったのかもしれない。愛することではなく、愛されることだけが大事だった。
「ごめんなさい」
私は周囲の目も気にせず、頭を下げた。
「自分がどれだけ勝手だったかに気づいて、反省したの。私は今でも昌太郎が大好きです。だから……やり直してくれたらうれしい」
頭は下げたままだったが、昌太郎が困ったようにうつむいたのはわかった。
「ごめん」
しばらくして、昌太郎はぽつりと答えた。
「たまきがそう思ってくれるのはうれしい。でもやっぱり……もう心が離れてしまったんだ」
テーブルの上にぽつ、ぽつと小さな染みが現れて、増えていった。私の、涙だった。
「帰ろう」
昌太郎が伝票を持って立ち上がる。
「遅くなったから、タクシー代を出すよ」
「最後にひとつだけ聞かせて」
涙を拭きながら顔を上げた。
「私の、どこが好きだったの? どこを好きになったの?」
「わからないよ」
昌太郎は苦笑した。
「何度も聞かれたけどさ。どこなんて、とくにないよ。雰囲気も顔も、全部含めて好きだったんだよ。恋愛って、そういうものじゃないの」
ひそかに抱えていた内面をアイに突きつけられてもなお、私は自分に自信があるのかないのか、じつはよくわかっていなかった。これまでのことは、自信があってしていたわけではないのだ。
こんな私のどこが好きなのかわからなくて不安だった。だから告白された側であることをいつまでも「引きずって」、昌太郎より有利でいたかったところもあると思う。情けないところを見せたりすることのない、ひたすら愛されるだけの存在になりたかった。
でも、どんな理由があったとしても、それは昌太郎の心が離れて当然のことだった。
「行こう」
昌太郎の声は、最後まで優しかった。
***
それから、大学やバイトに行きながらも、空いた時間にふとぼーっとする日々が続いた。
ぼーっとしている間はもちろん昌太郎で頭がいっぱいになっている。
今さらになって、「昌太郎の次の休みはいつだっけ」と考えてしまったり、街でも昌太郎が好きそうな店や場所、食べ物などをついつい探して、昌太郎に教えてあげたいと思ってしまう。前は、昌太郎が私に探してくれるほうが圧倒的に多かった。
「やっぱりやり直したい」という気持ちが、日増しに強くなっていく。
『もう一度だけ、会いたい』
ついに、そんなメールを送ってしまった。
2017.6.7 up 「いい恋にしてね」

返事は、簡潔だった。
『もう会えない。会うのがお互いにとっていいことだとは思えない』
その後も何度かメールをしたが、今度は返事もなかった。
こんなふうに情けなく追い縋ってみて初めて、今までは確かに格好つけていたんだなぁと自覚する。
今までは自分のことをさっぱりした、あまりものにこだわらないマイペースな性格だと思っていたけれど、そう思うことで本当の姿から目を逸らしていただけだ。
本当の姿――根拠のないプライドばかり高くて、そのくせ、そこに不安もあって。
しばらく、自分が生きているのか死んでいるのかよくわからないような状態で過ごした。朝いつ起きたのか覚えていないのに、気がつくと夜になっていることもあった。それでも何とかなってしまうのだから、人間の無意識というのはすごいものだ。
温泉研究会など休めるものは休んだが、バイトや大学の授業はふらふらしながら行った。
自由な時間ができると、昌太郎のことを思い出しては泣いた。町を歩いていて、突然涙が出てきてしまうこともあった。
「あまり悲しまないで……っていうほうが無理だと思うけど、君は間違いなく成長したよ。これをばねにして、新しい恋をすればいい。今じゃなくても、いずれ」
近くにいたアイは、そう言ってくれた。
アイはもう、昌太郎の姿ではない。そんなことをしたら私の心をえぐるとわかってくれているのだろう。男性の姿ですらなく、手のひらに乗るほどの小さなうさぎになっている。
「何もしないとよけいふさぎこんでしまうからね。体を動かせば心がついてくるよ」
姿こそかわいらしくなったけれど、今まで以上にぐいぐい引っぱるようなことを言う。
「でも、そんな気持ちには……」
「気持ちになんてべつにならなくていいんだ。とにかく、まずはウォーキングでも始めよう」
アイは私の肩にぴょんと乗る。
「川にでも行こうか。川辺を散歩したら気持ちいいよ」
さわやかな風に吹かれながら歩いていると、ほんの少しではあったけれど、心が晴れてきた。ここに昌太郎がいればと思ってしまう自分もいたが、それも受け入れた上で、気持ちいいな、もっと歩いてみたいなと思える。
「今じゃなくていい。もう少し落ち着いてきたら、肌や髪もきれいにしよう。たまきちゃんはきっと髪を切ってもキレイだよ」
***
あっという間に半年経った。
私はアイのアドバイスで髪を切り、服装も今までのフェミニンなものから、スポーティなイメージのものに変わった。もともと背が高めだったこともあり、「格好いい」「似合う」と好評だった。
夢に昌太郎が出てきて、目が覚めると涙で目の周りが濡れていることがなくなった頃、昌太郎に新しい彼女ができたと噂で聞いた。
正直、傷ついた。だが、同時に仕方がないとも思った。もう私と昌太郎は終わったんだ。
(忙しいだろうけどいい恋にしてね、昌太郎)
心の中でそう祝福した。
2017.6.8 up 「前に進めるよ」

ちょうどそんなとき、私はバイト先の男性社員に食事に誘われた。
といっても、たまたま退社時間が重なったので、「一緒に食事でもどう?」と声をかけてもらっただけだ。前もってデートの予定を入れたとか、そんなんじゃない。
星野大輔(ほしの・だいすけ)さんという彼は、入社2年目の社員だ。データ管理担当で、私に仕事をまかせてくれることも多い。まかせることが多いから、いつも「いっぱいいっぱいになってない?」とか、「わからないことはない?」などと、何かと気を遣ってくれた。
「誘えてよかったよ。いつも仕事をたくさんお願いしていて、悪いなぁと思ってたんだよね。なのに、ひとつひとつ丁寧にやってくれて、感謝してる。お礼に今日はおごるから、何でも好きなものを食べて」
「お礼だなんて……私も仕事ですし」
とはいっても、自分の仕事にそんな評価をしてくれるのはうれしい。
急な話でもあって、とくに食べたいものはなかったのでおまかせすると、「じゃあやっぱり焼肉かな。ベタだけど」と、会社のそばの焼き肉屋に連れていってくれた。
なかなかの高級店で、ランチで入ったことはあるが、ディナータイムに入るのは初めてだ。
じゅうじゅうと小気味良い音を立てて肉を焼きながら、まずは仕事の話をする。大学の負担になっていない? と聞かれたので、問題ないと答えると、今度はそこからプライベートの話になった。
星野さんは電車が好きなんだそうだ。撮り鉄という写真を撮るほうではなく、乗り鉄という、実際に自分が乗ってみることを重視するほうの電車好きだ。
「昔は女の子に言うのがなんとなく恥ずかしかったんだけどね。今は、別にいけないことをしているわけじゃないんだし、堂々と言うようにしてる。昔の自分は、何を格好つけていたのかなって思うよ」
格好つけるという言葉に古傷がきゅっと痛んだが、一瞬だった。
「今も長い休みのときは、ローカル線だけでどこまで行けるか試してみたりしているよ。覚えるつもりもないのに、時刻表も覚えてしまったし。何しろ一日の本数が少ないから」
「私もローカル線、好きですよ。ていうか、温泉研究会で秘湯に行くには、そういう電車じゃないと行けないんです」
思いも寄らない重なりのある趣味で、私たちの話は盛り上がった。
好きなことの話をしていると、今度はどんな人が好きかという話になった。恋愛観の話だ。
星野さんは、べつに趣味は合わなくてもいいけど、ある程度は認めてくれる女性がいいのだという。
「容姿や仕事はとくに気にしないかな。とにかく一緒にいて楽しくて、安らげる人」
私は、こんなふうに言った。
「私も、こういう人じゃないとイヤというのはとくにないんですけど……それとはべつに、次に恋をするときには絶対に注意したいなと思っていることがあるんです」
「そうなんだ。どんなこと?」
「格好つけたり、変なプライドを持ったりしないで、素直に、相手のことを尊重しようと思って。前の恋愛は、それで失ってしまったから」
「そうか」
星野さんは、優しい目をしてくれた。
「そんなふうに自分のあやまちを認められているのなら、きっとちゃんと前に進めるよ。がんばって。応援してる」
「はい」
真正面から励ましてもらえると、嬉しくなった。
これをきっかけに、私はその後も何度か星野さんと食事をした。
2017.6.9 up 「新しい恋をする気持ち」
一方で、温泉研究会のほうにも動きがあった。
私たちの研究会ではだいたい3ヶ月に一度、どこかしら温泉に行っている。次にどこに行くかというのは皆で話し合ってではなく、担当者をもちまわりにして決めていた。
私は、桐ケ谷悠史(きりがや・ゆうし)というひとつ下の後輩と一緒に、次回の担当になった。
「どのあたりがいいだろうねえ」
学食の喫茶店で、まずは簡単なミーティングをすることにした。ここは温泉大国、日本。秘湯といっても探せば数限りないので、おおざっぱにでもいいので最初に方向性を決めておいたほうがいいのだ。たとえば「都心に意外と近い秘湯」とか、「離島の秘湯」とか。
「俺、簡単にですけど資料をまとめてみたんですよね」
桐ケ谷くんはタブレットを取り出して、プレゼン用ソフトを開いた。
『〇〇大学温泉研究会 第13回活動場所について Version.0』というタイトルが、猿が温泉に浸かっているイメージ写真とともに出てくる。
次のページを開くと、日本地図があり、どの地域の温泉はどんな特徴があるかというのが簡単に説明されていた。
さらに次のページからは、ひとつひとつの説明がさらに詳しくなる。数が少なくはあるが、彼なりに今の時点でリサーチした秘湯例も挙げられていた。
私は心から感心した。
「すごいね、これ。全然簡単にまとめた資料じゃないよ。ミーティング用にはもったいないぐらい。ね、桐ケ谷くんさえよければ、みんなで共有しようよ。次の学園祭で販売してもいいんじゃないかな。もちろん、桐ケ谷くんが代表者ということで」
「そんな大層なもんじゃないですよ。もしそうするのなら、もっと手を入れたいし」
本当にすごいと思ったので私は褒めまくったが、それがくすぐったかったのか、
「先輩と担当に決まったとき、ああ、これは俺が引っぱっていかないとなって思って急いでつくったんですよ」
と、照れたように言った。
「えっ、私、そんなに頼りない?」
「そうじゃなくて、ずっとあんまり元気なかったから。最近また復活してきたけど」
ああ、そうか。私は後輩にも気づかれるぐらい、落ちこんでいたんだ。
「ありがとう。でも、もう大丈夫」
何が起こったのか話すつもりまではなかったけれど、私は彼をまっすぐに見た。
「大丈夫ならいいんですけど……でもまあ、何かあったら頼って下さい」
本格的に動き始めてわかったけれど、彼は本当に頼りになる存在だった。後輩だからといって指示待ちをせず、どんどん積極的に動く。元気を取り戻したとはいえ、私のほうが引っぱってもらうことが多かった。
***
星野さんと桐ケ谷くんのことを、私は少しずつ意識するようになっていった。
それでも、まだ新しい恋をする気持ちにはなれない。

(もう、キスの仕方も忘れちゃってるかも……)
ときどきそんなふうに思って、一人で苦笑した。
けれども、状況の変化が「私たち」を変えていった。
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AIを使ってみたら、昌太郎そっくりなアイがでてくる。はじめはすごく困惑して険悪な雰囲気になるが、自分の反省すべき点などを気づかせてもらったりして、だんだん打ち解けてくる。
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