
みんなで作る小説!ストーリーG
恋欠女子とバーチャル男子「AI」との恋愛応援物語

■恋欠女子とバーチャル男子ストーリーG
みんなで作る!恋愛応援小説『恋欠女子とバーチャル男子〜AIがあなたのお悩み解決します〜』が新連載としてスタート!アンケートの結果で行方が変わる、恋愛模様に目が離せない!
不思議なアプリ 「バーチャル男子」の開発秘話を公開します!


2017.7.18 up 「目標を決めよう」

アメリカでルームシェアしていた茉莉香が、「困ったときにはこのアプリがおすすめだよ」と教えてくれたアイ。
初めての日本での生活で困ったことがあったわけではなかったけれど、なんとなく興味があってダウンロードした。
それにしても……彼、ちょっとカッコいい。日本の少女マンガから飛び出してきたイケメンが目の前にいるみたい。黒髪で、ちょっと目つきが悪くて、でも優しそうで。私の小さなワンルームの賃貸アパートにはなんだか不似合いだけれど、嬉しい。
「何か悩みがある?」と聞かれ、私はまだカタコトの日本語で、日本の生活でダイエットをしたいことや、(これはできればだけど)カッコイイ日本人の彼氏がほしいことを話した。
アイは、まずダイエットをして、自分に自信が持てる状態になろうとアドバイスしてくれた。
「正しい自信は、人を惹きつける。自分が好きな自分でいられることは、どんなコスメより女の子をきれいにしてくれるんだ」
とはいえ、「ダイエットしよう」と言われても、どうしたらいいのかわからない。ううん、正確にいえば、私はもうダイエットをしている。そのことを、アイに話した。
「私、油や肉をあまり使わないで、出汁や魚を多く摂るヘルシーな日本食をつくって食べているようにしているんだけど……」
「おそらくキミの和食の知識は豊富だろうし、実践もしているだろう。でも、やっていることが偏っているんだ。要はバランスだからな」
そもそも痩せるには食生活も大切だけれど、代謝を上げるのが必要なんだとアイは教えてくれる。
「それに油を極端にカットすると腹持ちが悪くなる。間食が増えて逆効果になることが多い。多少摂取カロリーは増えたとして、運動で減らすよう心がければ大丈夫だ」
「うー、運動か」
うすうすわかってはいたが、目を逸らしていたことだった。昔からインドア派……というか、体を動かすのが好きではなかったのだ。
「まあ、まずは目標を決めよう。目標を決めれば、やる気も出てくる。たとえばこの服を着たいとか、モデルの誰みたいになりたいだとか、そういう憧れはないのか」
「95ポンドまで体重を減らしたい!」
私はすかさず答えた。
「43キロか」
アイはすぐに換算する。さすがAIだ。忘れていた、アメリカでは体重なんかはポンドで測るのが一般的だが、日本はキログラムだった。
なぜこの数字がすぐに出てきたのか、自分でもよくわからない。根深い憧れのようなものがあったのだろう。
「それじゃガリガリだな」
「でも、アニメのキャラやアイドルはこれぐらいでしょう。せっかくなら理想は高く持ちたい」
アイは顎に手を当て、わずかに眉をしかめた。
「大事なのは『どう見えるか』だ。結果としてその体重に落ち着くならいいが、体重だけにこだわると、体重自体は軽くなってもスタイルが悪くなったりもする」
「うーん……でも、私はね……」
アイの言うことを聞いたり、自分でも話したり考えたりしているうちに少しずつ自分の理想や価値観がクリアになっていった。
「華奢になりたいの。男の子に守りたいと思ってもらいたい」
2017.7.18 up 「恋してもらいたい」

華奢。それは、昔から固太り体型だった私の憧れだった。
「かわいいと感じて、恋してもらいたいの」
そう、結局そこに行き着きたいのだ。そのための華奢であり、43キロだった。
「それなら、いけるな」
アイの表情が明るくなった。イケメンにこんなふうに満面の笑みを向けられると、ちょっとドキドキしてしまう。
「体重を減らすだけじゃなくて、体づくりや服選びでも『華奢』はつくれる。全体を見直して、『守りたい』と思ってもらえる女の子を目指そう」
方向性が決まると、アイは「じゃ、これからよろしく」と右手を差し出してきた。ホログラムだから握手はできなかったけれど、気持ちは通じ合った気がした。
***
運動はウォーキングやランニング、ストレッチが中心だった。筋トレはあえてしなかった。筋肉があるほうが代謝を増やすという面ではいいのだが、どうしても華奢とはいいがたい体型になってしまう。私はもともと筋肉のつきやすい体質だったし、筋トレ以外の運動で自然につく分で十分だろうということだった。
加えて、エクササイズボールを使った体幹トレーニングも採り入れた。インナーマッスルは鍛えても外見にはほぼ響かないし、むしろ姿勢がいいとそれだけで全身がスッキリして見える。
英会話教室での仕事が終わると、ほぼ毎日、アイと一緒にトレーニングに励んだ。食事は今のままなら変える必要はない。むしろもう少し脂肪や炭水化物を増やすようにいわれた。
それから1ヶ月。
体重計に乗った私は、溜息をついた。毎日体重を測っていたからわかっていたことだけれど、区切りとなる日に改めて数字を突きつけられると、やはり落ち込んでしまう。
「2キロしか減っていない……」
けっこうがんばったのだから、10キロ……というのは無理でも、5キロぐらいは減ってもよさそうなものなのに。
「2キロも減ったんだから、大成功だ。急激なダイエットはリバウンドも大きいし、肌や髪にも悪い影響を与える。このぐらいのペースがちょうどいいんだ」
それはわかっている。でも今の私は、正論よりも自分の望む成果がほしかった。
数日後、茉莉香と久しぶりに会って一緒に食事をした。
「少し痩せた?」
と言ってくれたけれど、茉莉香には遠く及ばない。食べる量は私とそう変わらないのに、ダンサーという職業柄か、茉莉香はほっそりしていてとてもきれいだ。毎日の運動量が桁違いだというのはわかっているけれど、
(私も早くこんなふうになりたい。ランニングやストレッチばかりじゃ、私の望む成果はなかなか手に入れられない)
つい、そんなふうに思ってしまう。
(日本に来たら、もっと早くスリムになれると思っていたのに……)
「ケイト、もう食べないの?」
青じそのパスタを半分以上残した私に、茉莉香は心配そうに尋ねた。
「食欲がないの? 日本での生活で大変なことでもある?」
「ううん、たまたま今日はあまりお腹が空かなかっただけで……」
嘘だ。本当は全部平らげたかった。でも、早く痩せたい。それにはやっぱり食べないことがいちばんなのではないか。
その日から、私は食べる量を極端に減らすようになった。
2017.7.19 up 「私、どうなっちゃんだろう」

もちろんお腹は空いたが、それでも無理をして我慢をした。お腹が空いて仕方がないときは、出汁をとって飲んだ。昆布や煮干しで丁寧にとった出汁は体にもいいはずだ。休みの日は一日、それだけで過ごしたこともあった。
体重は、確かにどんどん減っていった。だが、すぐに肌にツヤがなくなり、髪も細くパサパサになった。顔はげっそりして目の下にはくまができ、ほかの教師や生徒、学校のスタッフに「大丈夫?」と心配されることも多くなった。
明らかに不健康な状態なのに、そのときの私はそうと自覚できなかった。むしろもっともっと徹底して小食にならなければと自分を追い込んだ。修行中のお坊さんみたいな感じだった。
一日中お腹が空いていて、やがて、何かを食べることしか考えられなくなった。
何か食べたい。何でもいい。でも食べたらまた太る。
(もうすぐ43キロ……)
体重計の数字だけが心の支えだった。だからこそ、少しでも増えたらと思うと、怖くて仕方がない。
アイはもう起動させなくなっていた。近くにいたら注意をされる。私は痩せたいだけなのに、面倒なことばかり言われるからいやになった。アイのアドバイスは確かに正しいけれど、私は正しいことだけを求めているんじゃない。正しいことと欲しいものの間にあるギャップを、どうしても埋められない。
視界に食べ物が入って食べたくなるのが怖くて、休みの日も仕事が終わってからも、家に閉じこもることが多くなった。食べ物が出てくるのを見たくなくて、テレビも見なくなったしSNSもしなくなった。ただ、ぼーっとしていた。
(これから私、どうなっちゃんだろう)
漠然とした不安が胸に重くのしかかる。空腹で頭がぼーっとしながらも、苦しかった。
***
あまりにも食べる量を減らしたせいで、私は頻繁に目眩に襲われるようなった。
あるとき、生徒さんの一人とマンツーマンレッスンを終え、エレベーターホールまで出てお見送りしようとしたとき、足元がぐらりと揺れた。
(倒れてしまう)と、頭の隅で他人事のように感じる。どうしようもできない。
「危ない」
その生徒さん――垂水 進矢(たるみず しんや)さんはとっさに私を抱きかかえてくれた。
「大丈夫ですか」
「sorry……いえ、す、すみません……」
私はこの垂水さんのことが気になっていた。恥ずかしくて、うまくお礼が言えない。きっと私は真っ赤になっていただろう。
垂水さんは30歳にして、都内にレストランを数軒経営する若手実業家だ。少しチャラい雰囲気もあるが、真面目だというのは授業態度や話しぶりからよくわかる。
垂水さんのお店はどれも素材にこだわった和食店であること、関西出身だという喋り方の独特のアクセント、それに何より少し童顔な私好みのイケメンであることからも、私は彼に惹かれていた。垂水さんは今後の事業展開として海外への進出も考えていて、部下に任せるだけでなく、自分でも英語をしっかり学ぼうと英会話教室に通い始めたのだった。
「先生、ちゃんとメシ食べてます? 最近顔色がよくないですし、夏バテか何かちゃいますか。今度自分とこのレストランに来ませんか。おいしいもんをご馳走します」
大きな手で私の肩を支えながら、彼は私の顔を覗きこんだ。
2017.7.20 up 「先生を困らせてます?」

「は、はい」
反射的に答えたものの、すぐに後悔した。
(レストランでおいしいものなんて食べたら、太っちゃう)
「で、でも、ご馳走だなんて……悪いです」
垂水さんとデートできるのは嬉しい。でも、太るわけにはいかない。私は必死で行かない言い訳を考えた。
「ええんです。外国人の方からのフィードバックが欲しいですし」
「でも私はもともと日本食が好きですから、役に立てるか自信がないし……」
「ひょっとして俺、先生を困らせてます?」
彼の表情が翳った。さんざん授業で見ていたのに、伏し目になったことで睫毛の長さに今さら気がつく。顔の造形も、よくよく見ると繊細だ。実業家としての自信や力強さを放つ一方で、少年の面影を残してもいる不思議な人だ。
「い、いえっ、そんなことはないです。嬉しいです。じゃあ、学校に確認してみます」
私はほとんど勢いで、そんなふうに答えていた。
(学校は許してくれるかな。プライベートで生徒さんのお店で食事なんて)
きっと許可してくれないだろう。ううん、許可されませんように。
だが、
「行った先で個人的に授業したりしなければいいですよ。そのあたりは大人同士のお付き合いですから」
いつも受付をしている中年女性に話すと、あっさり許可されてしまった。
その後、私は垂水さんから聞いていたメールアドレスにメールを送った。
『学校の許可をもらえました。楽しみにしています』
嘘をつくわけにはいかない。小さな学校だから、嘘をついてもバレる可能性は高い。
(うう、どうしよう……太っちゃう)
何も入れていない胃が、きゅっと痛くなった。
***
住所を教えてもらったお店には、北青山の一角にあった。
住宅街の中だったということもあり、薄暗くなっていたせいもあって迷ってしまった。
立派な家が並ぶ路地をきょろきょろしながら歩いていると、垂水さんがどこからか現れた。
「このあたりは迷われる方が多いんです。もしかしたらと思って店から出てきたんです」
垂水さんは個室を用意していてくれた。まわりを気にせず、ゆっくり料理の感想を話してほしいからだという。私たちは小さなテーブルで向かい合った。
「お通し」で出てきたのは、イカの塩辛だった。
「……おいしい」
小さな壺のような容器に入っていたのを一口食べて、私は呟いた。こんなに塩の味はまろやかに、イカの身は甘く引き締まって感じられる塩辛は初めてだ。
太るのは怖い。でも、和食ならカロリーも低いし、きっと大丈夫。それにこんなにおいしいものなら、よく噛んで、味わって食べられる。食欲のままに流し込んだりすることにはならない――。自分に言い聞かせて、全部食べた。
続いて出てきたのはさざえの醤油焼きだ。さざえを食べるのは初めてだった。どうやって食べたらいいかわからずに固まっていると、
「さざえはね、こうやって食べるんです。蓋をとって楊枝で身を刺して、殻の形に沿って、こう、ねじって……」
垂水さんの真似をすると、殻から身がするりと抜けた。
口に入れると、醤油の風味と潮の香りがふわりと鼻から抜けた。目の前に、見たこともないはずの日本の海の光景が広がる。
「すごいですね、これ……」
「そうでしょう。さざえの養殖にも醤油にも、普通の倍以上の手間暇をかけてるんですよ。さざえは餌にするワカメから厳選して……」
「う……っ、ぐす……」
垂水さんが説明してくれている最中だというのに、私は突然泣きだしてしまった。自分でもどうしようもできなかった。
(おいしい……食べるって、こんなに幸せなことだったんだ……)
忘れていた。ううん、忘れようとしていた。忘れなければいけないと思っていた。
頭に暖かいものが乗った。垂水さんの手だった。小さな子供を慈しむように、私の頭を撫でてくれる。
「先生、俺にはよぉわからへんけど、がんばっていたことがあったんでしょう。お疲れさん。今日はありのままでいてください」
2017.7.21 up 「こんなふうに迫られたら……」
結局、垂水さんにご馳走してもらった料理は全部食べた。
量があまり多くなかったから食べられた。気を使ってくれたのかもしれない。私があまりにもげっそりしていたから、あまりたくさんは食べられないだろうと。
家に帰ると、すぐに体重計に乗った。
「増えてる……」
目の前がすっと暗くなった。気を抜いたら胃の中のものが逆流しそうだった。
お腹が空っぽの状態で行ったのだから、食べた分、体重が増えるのは当たり前だ。だが、頭ではわかっていても、感情が理性に追いつかない。
(どうしよう、どうしよう、どうしよう……)
胃を押さえて、その場に座り込む。
(大丈夫。食べたのはカロリーの低い和食だから、それにそんなにたくさんじゃなかったから、運動すればすぐにまた体重を減らせるはず。明日食べる量を減らして、それで……)
大丈夫な理由をいくつも考えるが、思いついたそばから自分で否定してしまう。だめだ、だめ。何をしたって、どんなふうに考えたって、体重が増えてしまえばおしまい……。
(助けて……)
私は縋るようにスマホを持ち、アイを起動させた。
目の前に音もなくアイが現れる。
「あの、ごめんなさい。私……」
アプリを終了させてアドバイスを無視してしまったことをまず謝ろうとしたが、アイは、そんなことは別にどうでもいいというように、軽く頭を横に振った。
「食後2時間ぐらいは経っているな。だったらもう、腹はこなれているだろう」
「え? ああ、うん……」
「じゃあ、走りに行くぞ」
***
その日をきっかけに、以前ほど食べることに罪悪感を持たないようになった。多少食べ過ぎても、それで体重が戻っても、長いスパンで取り返せばいいと思うようになれた。
(食べるって、本来は楽しいことなんだ)
垂水さんのお店で、そう思い出せたのも大きかった。
体重は増えることもあったが、体調を気遣われることは少なくなった。それどころか同僚の先生や生徒さんたちから、「きれいになった」だとか、「チャーミングになった」と言ってもらえることが増えた。
体重の増加を些細なことだとはまだとても言えないけれど、追い詰められている感覚は薄くなっている。
ある日の授業の終わり、また垂水さんに食事に誘ってもらった。
「今度は君を料理したい、なんて」
冗談だとはわかっているが、垂水さんに言われるとドキドキしてしまう。

「悪ふざけはさておき、近々で予定、空いてます?」
「えーっと……」
スマホを出してスケジュール帳を確認しようとすると、
「全部捨てて、俺と一緒にいてほしいなー」
なんて、また冗談を言ってくる。もう、気になる人にこういうことを言われるのは心臓に悪い。でも本当にこんなふうに迫られたら……最高かも。
「予定がある? 俺が全部忘れさせたるわ……」
なんて後ろから抱きしめられて、顎をくいと持ち上げられて、キスを……ああ、妄想がどんどん膨らんでしまう。日本の少女マンガの読みすぎかな。
「ごめんなさい、来週のシフトがまだ出ていなくて。わかり次第、すぐにメールします」
「そうですか。じゃあ食事は食事と別の機会にするとして、今日軽く飲みに行くってのはどうです?」
関西弁独特のイントネーションで尋ねてくる。
え、今日? ちょっと待って。いきなりすぎる!
「先生がいやちゃうかったら、俺、先生の今日の授業が終わるまでどこかで待ってますよ」
私は……
![]() |
※クリックで投票してください。 |

● 裕子 さん
おそらく君の和食の知識は豊富だし、実践もしているだろう。でも、偏っていては意味がない。自分のいい所を魅力的に見せるために、自信をつけていくんだ。
いろいろあるけれど、前を向いて頑張る女の子(男の子でも)、応援していきたいです。
● かおり さん
らぶらぶな姿
● めーやん さん
全部捨てて、俺にしろ。
● アポロ さん
今夜は君を料理したい
● ??? さん
顎クイ ドキドキしたいです♪
● 麻里奈 さん
男性のキャラが少しチャラい感じが良いです。見た目と性格のギャップが合ってもいいと思います。
こんな恋してみたいなと思って読んでいます。これからも楽しみにしています。
● 希沙羅 さん
恋に一生懸命な女性キャラ。
● ??? さん
後ろからぎゅって抱きしめてほしいです。
● ??? さん
知らない食べ物が出てきて食べ方がわからなくて困っていると、
男性が周囲に気づかれないように耳元で小声で教えてくれる。
● nekoko さん
最初はくよくよ悩むけれど、結局は自分の行動次第ということに気づいて責任感をもってなおかつ楽し気に行動する主人公が見たい
● 幸 さん
好き
● ニヤニヤ さん
お仕事が終わったら
「お疲れさん」って頭をなでなでしてもらいたい。
いろんな場所に連れていってもらって
少しずつ、大人の女性に育ててもらいたい。
● kumakuma★ さん
「ありのままでいいんだよ」