
みんなで作る小説!ストーリーG
恋欠女子とバーチャル男子「AI」との恋愛応援物語

■恋欠女子とバーチャル男子ストーリーG
みんなで作る!恋愛応援小説『恋欠女子とバーチャル男子〜AIがあなたのお悩み解決します〜』が新連載としてスタート!アンケートの結果で行方が変わる、恋愛模様に目が離せない!
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2017.8.07 up 「少しでも一緒にいたい」

「今日軽く飲みに行くってのはどうです? 先生がいやちゃうかったら、俺、先生の今日の授業が終わるまでどこかで待ってますよ」
突然、垂水さんに誘われた私。
(え、今日? ちょっと待って。いきなりすぎる!)
憧れの垂水さんとの食事なのに、そんなつもりで来ていなかったから、今日はメイクもファッションもフツーすぎる。
(体調もよくなり始めたので、別の機会にしっかりお洒落して会いたい。でも……)
垂水さんがこんなふうに誘ってくれるのは、もしかしたらすごく貴重なことではないだろうか。垂水さんは飲食店数店舗を経営している。そんな立場ともなれば、かなり忙しいはずだ。
それに何より……たとえお洒落やファッションが満点ではなくても、私自身も垂水さんと少しでも長い時間一緒にいたかった。
(待っていると言ってくれているのだし……)
「は、はい。じゃあ今日、お願いします」
私はそう決めた。
垂水さんは私の授業がすべて終わる時間に、改めて迎えに来てくれると言ってくれた。
待ち合わせ場所は、学校の入っているビルの前。学校のスタッフや同僚の先生たちに見られたら少し恥ずかしい気もしたけれど、悪いことをしているわけじゃない。
ビルを出る前に、簡単に化粧直しをした。
茉莉香に勧めてもらい、持ち歩いていた「コイイロパウダー」。軽くはたくと、顔色がぱっと明るくなった。
コイイロパウダーは、ランチ後によく使っているお気に入りのコスメのひとつ。こんな遅い時間に使うのは、初めてだった。光の加減のためか、夕方ならではのメイク崩れも気にならなくなる。
垂水さんはビルの前にタクシーを泊めて待っていてくれた。
連れていってもらったのは、垂水さんがお友達と共同出資しているというバーだった。高層ビルの40階にあるラグジュアリーな店だ。
「わあ……」
店に入ると同時に、溜息が出た。天井までの全面ガラス張りの窓の向こうには、宝石箱をひっくり返したような夜景が広がっている。
お店にいる人たちの身なりもいい。私みたいなコムスメ一人では絶対に入れなかったバーだ。
案内に来た店員さんは、垂水さんに気付くと、「お席をご用意しておきました」と半個室状になっているカウンター席に案内してくれた。窓際で夜景がよく見えるが、まわりとは壁で区切られている。
席はやや密着ぎみで、肩が当たりそうなのがちょっと恥ずかしくもあった。本来は恋人同士のための席なのかもしれない。
「本当にきれい……」
垂水さんとそんなに近づけるのも嬉しいけれど、夜景の美しさにも惹かれる。
「喜んでもらえてよかった」
と、垂水さんは微笑んだ。
席につくと、店員さんがすぐにお酒を持ってきてくれた。
ウェルカムドリンクだろうかと思ったが、
「おすすめの日本酒なんで、飲んでみて下さい」
と垂水さんに言われた。
色こそ透明だけれど、細かな泡が無数に立ち上っている。シャンパングラスに入ってるし、日本酒というよりシャンパンだ。
「シャンパンみたいですね」
「ええ。シャンパンの代わりに出しました」
垂水さんは答える。
「嬉しいことがあったんで、先生に一緒にお祝いしてほしいと思ったんです」
「え、何ですか?」
私もお祝いに加えてもらえるなんて、何だろう。それとも、たまたまタイミングが合っただけだろうか。
「話したら長くなるんで、少しずつゆっくり話します。まずは乾杯しましょう」
彼がグラスを掲げたので、私も合わせた。
「乾杯」
2017.8.08 up 「あの頃を思い出した」

日本酒は優しい甘さだが舌に後に残らず、すっきりしていた。ほどよい炭酸が、甘さを上品に引き立てている。誰でも好みそうな味でありながらも、繊細な味わいだ。
「今まで飲んだ中で、いちばんおいしい日本酒です」
お世辞ではなくそう言うと、垂水さんは今度は微笑みではなく、本当に嬉しそうに満面でニッと笑った。
「このお酒はね、東北地方のつぶれかけた酒蔵の六代目と一緒に試行錯誤してつくったんです。市場に出回る数自体はえらい少ないけど、その分レアな日本酒としてファンがついているんです。ほんま苦労が報われました」
「それが嬉しいことですか?」
「あ、ちゃいます。すいません、俺、仕事が好きなんで、どうしても語りすぎてもうて」
垂水さんは少年のように鼻先を掻いた。なんだかかわいらしい仕草だ。
次の話に移る前に前菜が出てきた。瀬戸内産のタコを薄切りにして、蒸したものだという。ハーブで香りをつけたビネガーがかかっていた。
(ヘルシーだわ。これなら安心して食べられる)
心の中で、ひそかに安堵の息をついた。少し前に比べれば食べ物に対する心理的な抵抗はだいぶなくなっていたが、完全に消えたわけではない。ヘルシーでカロリーが低そうなものであれば、「食べても太らない」と安心できる分、ハードルは少なくなる。
蒸したタコはふっくらとしていながらも歯ごたえがあって、噛むたびに磯の豊かな香りが口や鼻に広がった。
「垂水さんのお店の料理って……うまく言えないけれど、食べるたびに採れた場所の風景まで見えるような気がします。行ったこともないのに、不思議だけれど」
今の日本語の能力ではうまく伝わらないことは承知で、私は感想を話した。たとえ完全にではなくても、とにかく少しでも感動を伝えたい。
垂水さんの顔から笑顔が消えた。眉根あたりに力のこもった、真剣そうな表情になる。
(え、私、何かまずいことを言ってしまったのかな)
まだまだ下手な日本語で、気づかずとんでもないことを言ってしまったのではないかと不安になった。
垂水さんは体ごとこちらに向き直った。
「先生」
「は、はい」
「先生を食事に誘ったとき、俺、店の経営の仕方を大幅に変えようと思っていたところだったんですよ」
真面目な顔のまま続ける。
「今の食材の質と規模で続けていくのは採算的に難しいんで、店の規模を縮小するか店舗の数を減らすか、もしくは店舗のうちのいくつかは食材の質をもう少し低くして、内装にこだわるだとか素材以外の部分で勝負しようか思っていたんです。飲食店に来る人たちのすべてが、最高級の味を求めているわけやないですからね。内装や雰囲気がよければ十分、という人もいるし。でも……」
垂水さんはいったん話を止めて、喉を湿らせるようにシャンパンをくいと飲んだ。
「あの日、先生が泣きながら食べてんのを見て、初心を思い出しました。ほんまにおいしいものを出すのが自分の使命やって、再確認したんです。たとえ店の規模を縮小するのであっても」
ふう、と小さく息を吐き、垂水さんは視線をガラスの向こうの夜景にすうっと流す。そして、独り言のように呟いた。
「先生の泣き顔で、俺は……あの頃を思い出したんです」
2017.8.09 up 「あのときがなかったら」

垂水さんは、大学時代に付き合っていた彼女のことを話し始めた。
その彼女こそ、垂水さんが飲食店を経営してみたいと思うようになったきっかけをつくった人だという。
垂水さんは大学では経営学について学んでいたものの、それは親に期待されて選んだ道に過ぎなかった。「自分が何をしたいのか」についてはなかなか答えを出せないまま、就職活動の時期がやってきた。
(愛着を持てない会社に就職して仕事をしても、自分の性格からして長続きするとは思えない。どうせなら本当に好きだと思える仕事がしたい)
そう思い、大学を1年休学して、世界を回りいろんな人や仕事を見てみようとまで考えた。
ちょうどその頃、当時付き合っていた彼女が摂食障害になった。
雑誌の読者モデルをしていた彼女は、もっと痩せたいと自分自身を追い詰めていった。
それは、食生活に端的に現れた。彼女は十分すぎるくらい華奢だったし、垂水さんもありのままの彼女が好きだった。でも、彼女にとってはそんなこと関係なかったのだ。
「もっと痩せる」
それだけが大事だった。彼女にとってありのままの彼女とは、理想の中の痩せた彼女だった。
話を聞きながら、私は自分を彼女に重ね合わせた。彼女の気持ちは、塩水が傷口に染みるようによくわかる。
彼女はやがて、骨の皮だけの骸骨みたいになっていった。それでも彼女自身は「まだ足りない」「もっと痩せなきゃ」と思い込んだ。周囲は通院を薦めたが、「病気じゃない。ダイエットだから」と頑なに拒んだ。
「そんな彼女を前にしても、俺はありきたりのことしか言えへんかった。食べないと死んじゃうよ、みたいなことしか」
彼女は結局、モデルの仕事の撮影中に倒れてしまった。炎天下だったという。話を聞いてやってきた両親は娘の「変わり果てた」姿を見て驚き、有無を言わせず地元に連れて帰った。
「当然、俺たちも別れざるを得んかった。それから俺は、自分はどうしたらよかったのかずっと考えたんや。考えて、考えて……出た答えは、『食べることの意味』を伝えたいということやった。食べることは楽しくて、幸せなことなんやと。だから、ほんまにおいしい素材を使ったレストランを経営しようと決めた」
垂水さんはまず、外食系の企業に勉強のためにも就職した。そこで数年かけ、一通り経営について学んだ後、独立した。
「独立はしても、まだまだ一人前とは言えへんけどな。手探りで勉強の毎日や」
いつしか、口調がすっかり砕けている。
そのせいもあるのか、私は今まで以上に垂水さんに惹かれていた。
(陽気に見える人だけれど、大変なこともあったんだ。当たり前だよね。明るいだけの人生なんてありえない)
「じつは私も……」と、垂水さんの話が終わると私も切り出した。
「ダイエットに躍起になっていたけれど、垂水さんのお店でとてもおいしい料理を食べて、食べることの楽しさを思い出せたんです。あのときがなかったら、今も食べることが苦しくてしょうがなかったかもしれません」
言った瞬間、心がふっと軽くなった。「ありがとう」「おいしかった」だけでは伝えきれなかった気持ちを、やっと言えた気がした。
2017.8.10 up 「先生、かわいすぎる」
私は、二人の距離が何となく縮まったのを感じた。お互い胸にあったものを明かした気安さからかもしれない。
そのせいか、お酒が回ってしまった。お酒を飲むことになるなんて思っていなかったから、昨夜はドラマを遅くまで見てしまった。
(あ、まずい……意識が……)
体が傾く。頭が暖かなものに当たった。
「あっ、すみません!」
垂水さんの肩に寄りかかってしまった。慌てて体を離す。
「いいんや」
一度は離れた体を、垂水さんは再び引き寄せる。
(えっ……と、垂水さんに抱かれてる? 私)
状況を理解するのに、たっぷり3秒はかかった。
嬉しい。でも、ドキドキが止まらなくてダメ。このままだとドキドキしすぎてどうにかなってしまいそう。でも、離れたくない。でも、心臓の音を気づかれてしまいそう。でも、気づかれたっていいじゃない……だって私は垂水さんが……
頭の中でとりとめもない考えが浮かんでは消えていく。
(ああ、夜景がとてもきれい……)
そのうちに私は、眠りに落ちてしまった。
***
「先生、先生……」
どのぐらい時間が経ったのか……優しく体を揺すられた。
「そろそろ行きましょう」
垂水さんが顔を覗き込んでくる。
「そろそろ? ……あっ」
腕時計を見ると、もう10時半を回っていた。
「わわ、すいません」
いつ眠りに落ちたのかはっきりとはわからないけれど、もしかしたら1時間近くは経っていたかもしれない。
意識がはっきりしてくると、自分がどんな状態でいたのかに今更ながら気づいた。
「ご、ごめんなさいっ!」
慌てて垂水さんの腕の中から離れる。
垂水さんは店員さんを呼んで、水を注文してくれた。翌日にお酒が残らないよう、そして今も少しでも酔いが覚めるよう、グラス一杯分を全部飲む。
席を立ってジャケットを羽織ろうとすると、後ろから何か暖かくて大きなものに包まれた。
垂水さんに、抱きしめられている。
「……垂水さん?」
私が振り返ろうとしたのと、垂水さんが私の顎にそっと手をかけたのは同時だった。優しく後ろを向かされ、そのまま、キスされた。

舌を入れない、ソフトなキス。だからって、緊張しないわけがない。
目を閉じた。もっと垂水さんを感じたい。もっと身を任せたい。
しばらくすると、垂水さんは唇を離した。私をまっすぐに見つめて微笑する。
「先生、かわいすぎる」
私の肩を持って、くるりと自分のほうを向けさせる。私は、今度は正面からぎゅっと抱きしめられた。
その日はタクシーを拾ってもらい、別れた。
2017.8.11 up 「好きです」

家に着いても、まだ頭がぼーっとしていた。もちろん酔いのせいだけじゃない。
(垂水さんに抱きしめられて、キスされちゃった……)
さっき起こったことが、信じられない。
(そうだ、アイにちゃんとお礼を言わなきゃ)
私はアイを起動させた。
くじけそうになったとき、アイに引っ張ってもらったから正しくダイエットを続けられたこと。だから、おいしいものをちゃんとおいしいと感じられたこと。
「ケイトが頑張ったからだよ」
私がお礼を言うと、アイは照れて苦笑した。
「僕にできるのはアドバイスだけだ。実行したのは、ケイトの力だよ」
「ううん、根気よくアドバイスしてくれる人なんて、なかなかいないから」
そうだ、何かと心配してくれる茉莉香にも、明日、ありがとうのメールを送ろう。最近、自分のことにばかりかまけすぎていた気がする。
「私、いろんな人に支えられていたんだね。支えられて……また恋ができた」
「へえ。どんな人?」
アイが目を丸くする。そういえばアイには、「恋がしたい」とは言ったけれど、垂水さんのことをちゃんと話してはいなかった。英会話学校で知り合ったいきさつから、私は話した。
翌朝、垂水さんにもごちそうさまのメールを送った。一緒にいられて楽しかったこと。学校でまたすぐに会えるのが嬉しいということ。すぐに、「本当はもっと一緒にいたかったんやけどね」と返事が来た。
***
その日学校に行くと、垂水さんのレッスンが二日後に入っていた。本来の予定とは違う、イレギュラーな予約だ。
レッスンの前には、またコイイロパウダーを使った。いいことがあった日に使ったコスメだから、験担ぎみたいなものだ(ゲンカツギというのは、日本人の私のおばあちゃんがよく使っていた言葉だ)。
どんな顔をして会えばいいのか正直わからなくて緊張したけれど、顔の色が明るくなると気持ちも少し晴れた。
(悪いことをしたわけじゃないんだし、変に恥ずかしがらずに堂々とすればいいんだ)
レッスンが始まると、テキストブックを開くより早く垂水さんに告白された。
「先生、この間結局言いそびれてしまったんやけど、付き合って下さい。俺、先生のことが好きです」
ひええええーっ! と心の中で悲鳴を上げる。だけど、どこかで予想はできていた。
「は、はい。こちらこそ、ぜひ……お願いします。私も垂水さんが……好きです」
ヘンな答え方かもと思いつつ、正直な気持ちを口にする。日本の少女マンガはよく読んでいたけれど、マンガはマンガだし、現実にどんな答え方をしていいのかよくわからない。
でもきっと、どの国にも正解なんてないんだろう。自分の気持ちをどれぐらい正しく伝えられるか、それだけじゃないだろうか。
垂水さんは手を伸ばし、私の頭をポンと撫でた。
「そういえば先生、日本の海を見たことないんやったよね。近々連れてってあげないと」
垂水さんのお店で食べたイカやさざえ、タコの味と、海の香りがよみがえる。
「はいっ!」
私は大きく頷いた。
***
それからしばらくして、私はいよいよ垂水さんと「初めてのお泊り」をすることになった。
「家に来てもいいし、せっかくなら少し季節外れだけれど海の見えるところに旅行に行ってもいいかもしれへんな。提携している漁師さんとも話せるし、和食に興味があるのなら楽しいんちゃうかな」
と、垂水さんは提案してくれた。
私は……
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軽く1杯だけにして、垂水さんはかつて付き合っていた彼女について話し始める。彼女には悩みがあり、
それはまさにケイトの悩みだった。十分すぎるくらい華奢で、ありのままの彼女が好きだった。
でも彼女は納得せず、自分自身を追い詰めていった。それは食生活にも現れた。あまりにも食べない彼女を見て、
俺はありきたりのことしか言えなかった。食べないと死んじゃうよ、みたいなね。
でも、そうじゃなかった。食べることは楽しくて、幸せなことなんだ。いろいろあって、その彼女とは別れたけど、
「食べることの意味」を伝えたくて、本物の素材を使ったレストランを経営しているんだ。
ケイトさんが、泣きながら食べているのを見て、あの頃を思い出したんだ。
今回の話は、主人公はAIを含め他の登場人物に支えられていることを分かって欲しいなと思います。
● キイロイトリ さん
体調も立て直しつつあったので、本当は別の機会にシッカリお洒落でもして会いたかったが、
相手は 店のオーナーとして忙しい立場の男性であるはずだし…何より自分が会いたいと思うのが正直な気持ちなので
「待っててくれる」なんて言われたら断れる訳がない。
● ??? さん
半個室のようなカウンター席に座り、いろいろな話をしていくうちに今まで以上に相手に惹かれていく。
程よくお酒が回ってきたところで、肩を抱き寄せられ、抱きしめられる。
● 黒猫 さん
さりげなく隣に座って、やや密着
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自分磨きをしている主人公に
ドキッとしたりして、恋に落ちて欲しい。
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