『恋欠女子とバーチャル男子』ストーリーB1

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みんなで作る小説!ストーリーB
恋欠女子とバーチャル男子「AI」との恋愛応援物語


タイトルアンケート

■恋欠女子とバーチャル男子ストーリーB

みんなで作る!恋愛応援小説『恋欠女子とバーチャル男子〜AIがあなたのお悩み解決します〜』が新連載としてスタート!アンケートの結果で行方が変わる、恋愛模様に目が離せない!

不思議なアプリ 「バーチャル男子」の開発秘話を公開します!



2017.2.13 up 「恋愛体質」

挿絵


 高速道路を降り、一般道を走り始めてしばらくすると、一面に田んぼが広がる景色が現れた。


「すごーい。きれい!」


 思わず高い声をあげてしまう。


「まさに黄金の海、かな。収穫期ならではの光景だなあ」


 隣で車を運転するカメラマンの祝田くんは、ライターの私以上に豊富な語彙で感動を口にした。


 私は伊川結。フリーランスのグルメライターだ。いくつかの雑誌やウェブサイトと契約し、寄稿している。


最近は都会の洗練された料理や下町のB級グルメよりも、素朴だが奥の深い地方ならではの郷土食や、その地域の気候や文化から発生した食について知りたいという読者が多く、数年前から地方取材の回数がぐんと増えた。


 今回やってきたのは東京から車で数時間のところにある、国内有数の米の産地だ。


某一流広告代理店から農家に転職した28歳の男性が「おにぎり専門米」として栽培したお米と、そのお米でつくったおにぎりを紹介する。28歳といえば、私と同い年だ。


窓を開けると、ひんやりとした風が入り込んできた。東京とは違い、土の匂いがする。都心のベッドタウンとして機能する郊外の街で育った私にはなじみのない匂い。でも、なぜか懐かしい気分になる。


ふと、私も遠くまで来たなあという感慨のようなものが胸に湧き上がった。


距離のことではなくて。


私はずっと、「これが自分の強み」だと胸を張れるものがほしかった。勉強のよくできたひとつ上の姉・咲と昔から比較されて続けてきたからだろう。


姉は、勉強はとびきりだった反面、恋愛や美容にはまったく興味のない人だった。そんな彼女に対抗するように私は「恋愛体質」を自称し、10代のころからオシャレや男性の心理を研究して、実を結んだかどうかはともかくたくさんの恋をしてきた。


でも、今考えると、無理をしていたのだ。「ここなら絶対に姉は入ってこられない」という領域に、自分のお城をつくっておきたかっただけだった。


 とはいえ、そうやって出会った相手の一人に自分の持ち味を見つけ出してもらい、それが今の仕事につながっているのだから、無駄な経験だったわけではない。


 3年前、私は女友達に誘われて、出版関係者が集まる合コンに出席した。そこで知り合い、後に付き合うことになった編集者と何度か食事に行くうちに「舌が肥えている」と褒められた。そして彼の担当する雑誌で、食に関する記事を書いてみないかと誘われたのが、今の職についたきっかけだった。




2017.2.14 up 「一年以上恋をしていなかった」

挿絵


 私の記事は単なる「味」だけに留まらず、人間同士の関係を語っているようで奥が深いと評価されて、それから食についての記事を少しずつ依頼されるようになった。


 奥が深いかどうかはわからないけれど、素材のもともとの持ち味をどの程度表現するか、どんな味つけをするか、どんなふうに盛りつけるかなどは、恋愛にも共通するところがあると感じているから、これもやっぱり昔の経験が役に立ったのだといえるだろう。


自信が持てるようになると、姉に対抗意識や苦手意識をこともなくなった。


姉は最近、恋でもしたのか急におしゃれに目覚めて、私がメイクやファッションのアドバイスをしたが、昔の自分だったらそんな心の余裕は絶対に持てなかっただろう。


 姉にとっては、私は今も「恋愛体質の女の子」に映っているようで、何かと頼りにしてくれる。私自身も今さら引っ込みがつかなくて、姉の前ではそんなふうに振舞ったりもする。「恋愛は人生に潤いをもたらしてくれる!」なんて、エラそうに言ってみたり。


でも実際は、すっかり「恋欠女子」だ。


 なんたって、その編集者と去年別れて以来、一年以上も恋をしていない。


 別れた理由は、相手に別に好きな相手ができたからだった。彼の出版社の新入社員だ。


 ただの恋愛だったら、ここまで傷つき、引きずることもなかったのかな、と思う。彼は私の人生そのものを切り開いてくれた人でもあるから、最大級といっていいダメージを受けた。


このまま会えなくなればよかったのに、その雑誌での仕事は担当編集が代わった状態でいまだに続いているから、どうしても顔を合わせることがあるのがつらい。小さな出版社だから、打ち合わせなんかに行くと、ものすごーく高い確率で新しい彼女を見ることになるのもやりきれない。


つまり失恋の傷は、癒えているとはまだとても言えなかった。


「ああ、東京を離れてこういうところで自然を相手にしながら暮らしたいなあ」


窓の外を見つめ、私は呟いた。


冗談のつもりはない。編集者と別れてから次第に、本当にそんな気持ちが強くなっている。


もちろん、東京で働くのと同じぐらいか、それ以上に大変な生活になるだろうというのはわかっている。


別に消去法で東京から逃げたいというつもりでもない。情報をせわしなく受発信する今の仕事も、決して嫌いじゃない。今の仕事でステップアップしたい気持ちもある。


それでも地方取材で、その土地ならではの食を生産する人々と触れ合うようになって、もっと地に足のついた、自然の営みを感じられる生活にも強く憧れるようになった。




2017.2.15 up 「私たちの共通点かもしれない」

挿絵


「悪くはないと思うけど、もうちょっと東京で頑張ってもいいんじゃないの」


 ハンドルを握る祝田くんは、こちらは見ずに微笑だけ浮かべる。


「でも、私もう28だよ」


「そんなに年齢に縛られることないだろ。そういうの自縄自縛っていうんだよ。ていうか『もう』とか言うなよ。俺、年上なんだけど」


 フード専門カメラマンである彼との付き合いは長い。二人でタッグを組んで取材に行くことも、数えきれないほどになった。ひとつ年上の29歳なのに「くん」と呼ばせてしまう、どこか飄々とした少年のような雰囲気が彼にはある。


祝田くんは食べ物を撮るのももちろんうまいけれど、真価はその食べ物に関わる「人」を撮ることのほうにあると私は思っている。人をリラックスさせてしまう天才なのだ。


気難しいおじいちゃんも、引っ込み思案なおばあちゃんも、彼のレンズの前では自然に笑顔になる。その手に持っている彼らの得意料理や好物は、ただテーブルの上に置かれているよりももっとずっとおいしそうに見える。「食」を表現するのに、「食」という枠以外のところにも可能性を見出そうとすることが、私たちの共通点かもしれない。


 取材先にはカーナビのおかげで迷うこともなく辿り着けた。


「やー、どうもどうも。お待ちしていました」


 田んぼの横にぽつんと建つ古民家から出てきた男性は、スラリとした長身のイケメンだった。今回の取材相手の川瀬さんだ。


「おにぎり、つくってありますよ。まずは食べてみて下さい」


 私たちは彼に招かれて古民家に入った。川瀬さんはここでひとり暮らしをしているらしい。


 おにぎりは本当においしかった。独特の粘り気があって、味が濃い。


「冷えてもおいしいお米を目指しているんです。それと同時に、ほかほかの炊きたてごはんもいいですが、冷めたごはんもいいものですよという意識を広げていきたい。とくにおにぎりはつくり置きもできるし、具もいくらでも工夫できるわりには手間がかからない。何かと忙しい共働きの家にもお薦めしていきたいんですよね」


 さすがは元・広告代理店の企画担当だと感心する。おいしいものをつくるだけでなく、おいしいものをおいしいと感じさせる意識をも生み出そうとしている、


 話に合わせて、少し冷えて固まったお米の写真も撮らせてもらった。




2017.2.16 up 「一緒に働いてくれる人」


挿絵

取材をしていると、近くに住んでいるというおばあさんが訪ねてきた。


 チャイムを鳴らすこともドアをノックすることもなく、いきなり上がり込んできたので少しびっくりした。


 大根の煮物を作ったので、川瀬さんにおすそ分けしようと来たのだという。


「この子はねえ、奥さんもいないから何かと心配でねえ。私たちがちゃんとおいしいもの食べさせてあげないとって、みんなで言ってるんだよ」


 自慢の孫を紹介するような口調だった。


「そうそう。東京にいたころは家族は両親と妹だけだったけど、ここに来てからは増えました。ご近所さんみんなが家族という感じ。心配してもらって、本当にありがたいです」


 川瀬さんは屈託なく笑った。


 ここは若い人たちが外に出ていってしまったから、わざわざ住みつこうとする川瀬さんのような人を、お年寄りたちが大事にしてくれるのだそうだ。


 いつも思うのだけれど、地方の人たちの独特の距離の近さは私にとっては新鮮だ。地方出身の祝田くんは、「べつにいいことばかりじゃないよ」と言う。だとしたらこれは、都市部や都市郊外で生まれ育った人間ならではの感覚なのかもしれない。


 川瀬さんの田んぼはまだ少ししか刈り入れが済んでいない。撮影を兼ねた稲刈り体験ということで、


「普段はトラクターを使って一気に刈るんですけど、せっかくですから昔ながらのやり方を試してみて下さい」


 と、鎌を渡された。


 私たちは夜までたっぷりインタビューと撮影をし、その日は川瀬さんの家に泊まらせてもらった。川瀬さんの家は、昔の地方の民家らしく部屋が多かった。彼ひとりではほとんど使いきれていないらしい。


翌朝の帰り際、川瀬さんは言った。


「僕はここに骨を埋めようと決めたので、事業としてもっと広めていきたいんです。だから一緒に働いてくれる人募集中だと、記事に書いてもらえませんか。いきなり引っ越すのも不安でしょうから、まずはためしにしばらく暮らしてみるというぐらいの感覚でも構いません。幸い、家にはたくさん空き部屋がありますから」


(一緒に働いてくれる人、か……)


 車の中で、その言葉を何度も反芻した。


 川瀬さんは人間としても男性としても悪い人ではないように見える。行動力も発想力もあるから、一緒に働けたら何かと楽しいことが多そうだ。


 東京を離れて、自分が惹きつけられた土地で新たな暮らしを始めてみたいという気持ちが、また強くなった。ためしに暮らしてみることもできるのなら、慎重になりすぎる必要もないのかもしれない。




2017.2.17 up 「今は正直なところ悩んでしまう」


挿絵

突然、祝田くんがこれまでよりも硬めの声で話しかけてきた。


「伊川さん。ちょっと、改めてお話したいことがあるんだけど」


「な、なに?」


 私の声もつられて硬くなる。


祝田くんを見ると、背筋までまっすぐ伸びていた。何かとても大事なことを言おうとしているのだとわかる。


 いつも飄々とした祝田くんのこんなところを見るのは、長い付き合いの中でも初めてだった。


「じつは仕事で、相談したいことがあって」


「仕事?」


 祝田くんの話は、こうだった。


 彼はある大手百貨店の広報から、「お取り寄せ専門グルメサイト」の立ち上げを持ち掛けられたらしい。


 単なる通信販売サイトにするのでなく、読み物としても面白いものにしたいから、もし知り合いにそういったジャンルに興味のある文化人がいたら紹介してほしいと言われたそうだ。


「俺はチーフフォトグラファーとして参加する予定なんだけど、よかったら伊川さんにメインライターになってほしくてさ。ほかに参加が決まっているのは……」


 彼が名前を挙げたのは、有名作家やイラストレーター、ミュージシャンなど、私にしてみれば雲の上の存在たちだった。


大手百貨店のサイトで、そんな有名人の中に入ってメインライターを張れるなんて、飛躍のチャンス以外の何ものでもない。


「ただね、やっぱりどうしても時間的には不自由になるだろうから、たぶん、他の仕事はいくつか切ってもらうことになる。今みたいに地方を回るようなこともできなくなるかもしれない」


 祝田くんの語り口が淡々としていたのは、自分の感情を挟むことで私の判断に影響を及ぼさないよう、気を使ってくれたからだろう。


「メインライターか……」


 少し前の私だったら絶対に飛びついていた話だった。


 でも、今は正直なところ悩んでしまう。


 長年の戦友みたいな祝田くんと、得意分野を活かして、今いる場所でステップアップを目指すか。


 それとも、新しい場所で川瀬さんの「事業」に加わり、新しい生き方を始めるか。


 後者は「お試し」も可能ではあるが、前者はすぐに返事をしないとチャンスを逃してしまうことになる。


 それはつまり、今、どちらかを選ばないといけないということだ。


 私は目を閉じて考えた。




シーズン1終了

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