『恋欠女子とバーチャル男子』ストーリーB2

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みんなで作る小説!ストーリーB
恋欠女子とバーチャル男子「AI」との恋愛応援物語



タイトルアンケート

■恋欠女子とバーチャル男子ストーリーB

みんなで作る!恋愛応援小説『恋欠女子とバーチャル男子〜AIがあなたのお悩み解決します〜』が新連載としてスタート!アンケートの結果で行方が変わる、恋愛模様に目が離せない!

不思議なアプリ 「バーチャル男子」の開発秘話を公開します!




タイトルアンケート
アンケート


2017.3.6 up 「もっと、ずっと昔……」

挿絵


東京でステップアップを目指すか、地方で新たな人生に挑戦するか――。


「大手百貨店のお取り寄せ専門通販サイト……か。ごめん、考えるのに少し時間をもらっていい? 将来を左右する話になりそうだし」


 私が尋ねると、祝田くんは真剣な表情で答えた。


「もちろん、すぐに返事をもらおうとは思っていないよ。一ヶ月ぐらいは猶予があるから後悔のないように考えてほしい」


 東京に着くと、家の最寄り駅まで数駅のところで車から降ろしてもらった。


「データができたら伊川さんにも送るよ。明日になると思う。じゃあ、お疲れ」


「お疲れ様でした」


 手を振って別れた。


 翌日、祝田くんから送られてきた写真を見つつ原稿を完成させてから、本格的に考えた。


 さて、どうするか。


(こんなときは、行動してみよう)


 刑事じゃないけれど、机で悩んでいても答えの出ないときは現場に足を運ぶに限る。私はさっそく、川瀬さんにメールを送ることにした。まずは取材のお礼と進捗状況を述べてから、この間の「ためしに暮らしてみる」件について興味があると伝える。


 確認したかったのは、「ためしに」というのは具体的にどのぐらいのことを指すのだろうということだ。現在の仕事との兼ね合いもあるので、ノートPCを持っていって夜には作業をするとしても、1週間が限度だろう。


 その日の夜には、1週間でも十分だと返事が来た。


『週末だけ来て、家に泊まって農作業をして帰る人もたくさんいます。無理のない範囲で大丈夫ですよ。お米の収穫はもう終わりましたが、今は小さなハウスで大根や白菜、カブをつくっています。それでよければ』


 じゃあ、ぜひお邪魔させてくださいと返事をすると、以降はメッセンジャーで具体的な日程や時間を詰めた。結局、その週の週末に行くことになった。


 一緒に住んでいる姉には、今度は1週間ほど家を空けるとだけ言って、内容は説明しなかった。お互いの仕事について詳しいわけではないので、いちいち何をするかまで話さないのはいつものことだ。


もし移住することになったら引っ越しなどで迷惑をかけることになるだろうけど、今の時点では何も話せない。あやふやな情報で混乱させるほうがかえって申し訳ない。


 当日は電車を使うことにした。免許はあっても車は持っていないし、レンタカーで行くにしても週末の道の混み具合を予測できない。


新幹線を降りて在来線に乗り換えると、週末だというのに数駅でガラガラになった。乗っている大半はお年寄りだ。本当に過疎化したところなんだと、ひしひしと感じる。


 ボックスシートに座っていた私の斜め前には、なかなかのイケメンがいた。年は私と同じぐらいだろうか。


(やっぱり移動しようかな……)


 イケメンとはいえ、人のいない車内でこれだけ近い距離にいるのは落ち着かない。乗ったときにはそこそこ人がいたのだが、今はもう、ここまで近いとかえって不自然な気がする。


 それでも動けなかったのは、彼になんとなく見覚えがあったからだ。


(誰だっけ? どこで会ったんだっけ……取材先? ううん、もっと、ずっと昔……)




2017.3.7 up 「驚いて振り返る」

挿絵


 だが、不思議なことに彼も席を移動しない。


 赤の他人と近い距離にいることをあまり気にしない人もいるけれど、そういうタイプにも見えない。


 それに、相手も私が気になるようだ。ときどき、ちらちらと私のほうを窺っているみたいな……。


 私たちは結局、ほぼ同時に席を立って、少し離れた席に移った。それでも、離れてもやっぱり視線を感じた。相手も私の視線を感じていただろう。


 30分ほど電車に揺られた。目的地の駅名を告げるアナウンスが流れてきたのでジャケットを着て荷物を引き寄せると、彼も同じようにしていた。


(何の用があるんだろう。地元の人?……には見えないなあ)


 降りた駅のホームには人はいなかった。駅員さんもいない。つまり無人駅だ。あたりには鳥の鳴きかわすのどかな声だけが聞こえる。


 私は彼を気にしないふりをして、改札口に向かって歩き出した。


「ひょっとして、伊川さん?」


 彼にいきなり名前を呼ばれた。驚いて振り返る。


 どうして私の名前を知っているの? 私は彼の顔をまじまじと見つめた。


 ああっ……誰だっけ。思い出せそうで思い出せない。


 そのとき、改札口の向こうから朗々とした声が響いた。


「すみません。待ちました?」


 今度はそっちを振り向くと、川瀬さんが改札の向こうにいた。駅から川瀬さんの家までは距離があるので、電車の到着に合わせて車で迎えに来てくれると言っていたのだ。


「いえ、全然」


「あ、市川と一緒だったんですね」


 川瀬さんは、私の奥にいた彼を見て目を丸くした。


「なんだよ、来る時間がわかったら教えてくれって言っておいたじゃないか」


「あれ? メール届いてない?……やべっ、送れてなかった」


 この二人は知り合いなのか? 私は川瀬さんとイケメンを交互に見やった。


 と同時に、市川という名前にも懐かしさを覚える。……市川、くん?


「あれ、ひょっとして市川くん?」


 驚きのあまり、1オクターブは高い声を出してしまう。


 彼は小学校の同級生だった。いかわといちかわで、出席番号順で何かと一緒になることが多かった。


「えっ、ちょっと待って。どういうこと?」


 今度は川瀬さんがぽかんとする。


***


 市川くんとは中学校まで同じ学校に通った。


中学に入ってからは生徒数が増えてあまり顔を合わせることはなくなったけれど、挨拶ぐらいはしていた。


 彼は、確かに当時から顔は整っていた。でも、地味だった。地味というか、野暮ったかった。


 その反面、私は中学に入った頃から姉への反動でオシャレに目覚め、「恋多き女」の素地をつくっていった。


 確か2年のときだったと思う。私は、彼に告白された。


 しかし私は彼を友達以上の存在として見られず、断った。


 オシャレで恋多き女である私の彼は、みんなに人気のイケメンでなければいけない。悪い人ではないし一緒にいて気楽な相手ではあるけれど、市川くんみたいに野暮ったい男子となんて付き合ったら評価が落ちてしまう。もちろん、そんなことまでは言わなかったけれど。


 私が断ったのをきっかけに私たちの間には距離ができた。正確にいえば、彼が私を避けるようになった。でも、さして追いかけたい相手でもなかったし、とくに何もしなかった。


その後、市川くんは勉強に力を入れ始めたようだった。そして、地元ではトップの進学校に入学した。




2017.3.8 up 「まさかいやだとは言えない」

挿絵


私と市川くんは、川瀬さんが運転する軽ワゴンの後部座席に並んで座った。


「こいつは広告代理店時代の同僚なんですよ。伊川さんの小中学校時代の同級生だったなんて、偶然ってあるものですね」


 川瀬さんは言った。市川くんは、川瀬さんに頼まれて週末によく手伝いに来るそうだ。


(イケメンはイケメンを呼ぶのか……どっちも格好いいなあ)


 私のほうは、ついついそんなところばかりが気になってしまう。


(市川くん、こんなに格好よくなるんだったらフラなければよかったな〜)


 なんて、冗談っぽく思ったりもした。


 川瀬さんの家には男性二人、女性二人がすでに集まっていた。朝から作業を始めていたらしい。今は休み時間ということで、縁側でお茶を飲んでいる。川瀬さんの知り合いや、知り合いの知り合いで、全員、首都圏からやってきたそうだ。


「ビニールハウスは家の裏手にあります。疲れたらいつでも出てきて、休んで下さい」


 川瀬さんはそう説明してくれた。


 日暮れまで作業して、夕食になった。土間に置いた七輪で、川瀬さんが地元の野菜やキノコ、お肉などを焼いてくれる。もちろん、おにぎりも出してくれた。


 醤油を塗った表面を七輪で焼いたおにぎりは、信じられないぐらいおいしかった。中はアツアツでパリっとしていて、中はもちっとしている。粘りを出すために、わざわざ一度冷やしたそうだ。


 みんな口々においしい、おいしいと騒ぎながらごはんを食べていたけれど、私の心は今ひとつ晴れなかった。


 今日の農作業は確かに楽しかった。土と触れ合って作業するのが、こんなに無心になれることだと思わなかった。


 だからこそ、より迷いは深まった。つまらないとでも感じれば、もっと簡単に答えを出すことができたのに。


 私は缶ビールを手にして裏庭に出た。


 月も星もきれいだった。空気が澄みきっていて、夜って本来は月光で明るいものなんだとわかった。


 背後で砂利を踏む音がしたので振り返ると、市川くんが近づいてくるところだった。


「ちょっと話してもいいかな」


「もちろん」


 本心では少し緊張したけれど、まさかいやだとは言えない。


「まさかこんなところで伊川さんに会うなんて。本当に久しぶりだね。高校に行ってからは全然会わなかったし」


「そうだね」


 曖昧にうなずく。中学時代とはいえ、フった相手とどういう顔で喋ればいいのか、よくわからない。


「俺はさ、高校になったらもう一度伊川さんに告白しようと思ってたんだ」


 触れていいのかどうかわからないところにいきなり切り込まれて一瞬心臓が跳ね上がったが、それも一瞬だけで、あとはかえって楽になれた。


「振り向いてもらえるように勉強を頑張って、それから見た目も自分なりに磨いて。でも、伊川さんはずっと彼氏持ちだったから、なかなかチャンスが掴めなかった。そのうちに俺のことを好きだって言ってくれる子も現れて、その子、いい子だったんで付き合うようになって、大学受験の時期が来て……」


 私も、自分のこれまでを簡単に話した。「恋多き女」として邁進していた頃のことや、直近の失恋についてはさすがに詳しくは話さなかったが。


 話しているうちに昔の気軽さがよみがえってきて、今、何をしているのか、これからどうしたいのかといったことにまで話は及んだ。




2017.3.9 up 「運命?」


挿絵

「じつは俺、今迷ってるんだよね」


 市川くんは、夜空を見上げて小さく溜息をついた。


「今までがむしゃらに働いてきて、それなりの結果もついてきて、でもこのままずっとこれを続けていくのか、これでいいのかなって思ったときに、川瀬が退職してここで暮らし始めたんだ。話だけはずっと聞いていたし、週末には家のリノベーションを手伝いに来たりしたけれど、なんだかどんどん羨ましくなってきてさ」


「羨ましいって、何が?」


「人の命に直結するものをつくるって、すごい満足感と充実感がある。俺の仕事は、生活を豊かにはするけれど、命と直接つながっているかとそうじゃないからさ」


「うん、わかるよ」


 すべてではないけれど、東京を離れてこっちで暮らしてみたいという理由には、そんな気持ちも混じっている。


「私もね、今迷っているんだ。東京でライターの仕事をするのも楽しいけど、こういうところで暮らすのにも興味があって……」


「そうか。なんか、運命みたいなものを感じちゃうな」


「運命?」


「うん。好きな人と再会して、一緒に新たな人生に踏み出すっていうのが……もし伊川さんも移住するんだったらだけど」


「一緒って……なんだかそれ、結婚するみたいじゃない」


「はは。いきなりそんなつもりはなかったけど、後で振り返ってみたら今日のことが結局プロポーズだったのかなって思うのかもね」


「ちょっとちょっと。私、そんなあいまいなプロポーズはイヤ」


「俺も、プロポーズするならちゃんとしたいけどね」


 そこまで言って、私たちは黙りこんだ。自分たちの話したことに、今さらながら二人して照れているのが空気でわかった。


「ちょっとそのへん、歩かない?」


 市川くんに誘われて、私たちは家の裏門から小道に出た。稲の刈り取られた田んぼが月明りで水底に沈んだみたいになっている。


 歩きながら、市川くんはごく自然に私の手を取った。私は振り払うことはせず、指先に少しだけ力を込めた。


 ひょっとしたら、これは最高の「新たな人生の踏み出し方」かもしれない。元彼のことも、忘れられるかもしれない――。


***


東京に戻ると、まずは溜まっていたメールの返信を片付けた。川瀬さんの家に滞在中にほとんど返事をしていたけれど、資料を添付しないといけないものなど、まだ何通かは残っていた。


作業していると、ポンと受信を示す音がした。


 確認すると、祝田くんからだった。


『あの話、どう? よかったら一度話さない? ウチに来ればメシもつくるよ』


 ちなみに、祝田くんと家を行き来するのは珍しいことではない。打ち合わせ代わりにそれぞれの家を使うこともある。長い付き合いだから、そんなことも当たり前になってしまった。


 こんな付き合いも、私が移住したらなくなってしまうんだろう。


 そう考えると、遊びに行けるうちに行って、話をたくさんしておきたい気もした。


 予定を確認し合うと翌日の夜が空いていたので、家を訪ねることにした。祝田くんは料理に関しては撮影だけではなくつくることも好きで、私の味の好みもわかっている。それもまた、長年時間をともにしてきたからだ。


 その日は、パスタをつくって待っていてくれた。ソースは唐辛子をピリリときかせたアラビアータだ。


 私はパスタを食べながら、正直に、じつは川瀬さんのところに移住することに興味があるのだと打ち明けた。




2017.3.10 up 「恋多き女」



 祝田くんは、それほど驚かなかった。


「まあ、伊川さんはいずれそういうことを言い出すと思っていたよ」


「まだ悩んでいるんだけどね」


「家族はなんて言っているの? 実現させるとしたら大がかりな話になるだろうし、いちばん近くにいる人のアドバイスを聞いたほうがいいんじゃない」


「家族……!」


 真っ先に思い浮かんだのは、姉の咲の顔だ。


 両親とは離れて暮らしてだいぶ経つし、現状いちばんアドバイスとして有用そうなのは姉の意見だろう。昔ほど、距離も溝も感じていない。


きちんと話すいい機会かもしれない。私はさっそく姉に相談した。長い間、コンプレックスを抱いていたことはさすがに話せなかった。でも、手痛い失恋をしたことは正直に言った。それをいまだに引きずっていることも。


姉の答えは、至極まっとうだった。


「仕事にでも失恋にでも、決断を下すべきこと以外で疲れているのなら、その疲れが癒えてから決めたほうがいいよ。ほかの感情に振り回されると、正しい判断ができなくなる」


 さすがに理系の院卒らしい、といったらそれはそれで偏見になりそうだけど、とにかく竹をスパっと割ったような返答だった。


確かに昔、自分が望まないまま「恋多き女」になったのも、べつに恋をしたいという願望からではなく、姉への反発という「ほかの感情」が原因だった。選ぼうと思えばほかの道も選べたのに。そこで道を誤って、本意ではない生き方を何年もした。結局、今もそれを引きずっている。


「ありがとう。お姉ちゃんって、頼りになるね」


「役に立てたのならよかった」


 姉は笑い返してくれた。


挿絵

***


失恋の傷は、まだ癒えていない。


市川さんのことも、元彼のことを忘れてからちゃんとスタートさせたい。今は男性として強く惹かれているというよりは、新しいことが始まるワクワク感に麻痺しているだけという気もしなくもない。


ニュートラルな自分を取り戻そう。すぐに決断をするのはやめて、今は東京で、必要としてもらっていることをしよう。その後で答えを出すのでも、遅くはないだろう。28歳という年齢に焦りもあるけれど、だからといって答えを急いでは後悔しそうだ。


私は川瀬さんと市川くん、それに祝田くんに連絡をして、やはりもう少し東京で頑張ってみることにしたと伝えた。


市川くんは、会えたのもせっかくの縁なのだから、私が移住しないのなら自分も当分は週末の手伝いだけにすると言った。同時に、「お取り寄せ専門通販サイト運営」なんて仕事があるのなら興味がある、自分も一枚噛みたいと興味を示した。宣伝に関わりたいという。


実際、市川くんはすぐに手を回して、宣伝担当の一人になった。なんだかんだ言って、こういうときに大手は強い。


***


 それから約2ヶ月後――。度重なる企画会議を経て、いよいよ企画が発信した。仕事は思った以上に忙しく、終電近くまでかかることもしょっちゅうだった。


 そんなとき、あるハプニングが起こった。




シーズン1終了

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