
みんなで作る小説!ストーリーB
恋欠女子とバーチャル男子「AI」との恋愛応援物語

■恋欠女子とバーチャル男子ストーリーB
みんなで作る!恋愛応援小説『恋欠女子とバーチャル男子〜AIがあなたのお悩み解決します〜』が新連載としてスタート!アンケートの結果で行方が変わる、恋愛模様に目が離せない!
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2017.3.21 up 「一晩ぐらいなら何とか」

事件は、祝田くんと深夜までスタジオ撮影をしているときに起こった。
私は祝田くんと、夕方から商品の撮影をしていた。その日はとくに点数が多かったが、手を抜くわけにはいかなかった。
どんな媒体だって写真は大事だけれど、この仕事はとくにそうだった。ただ商品をありのままに伝えるだけでなく、それを生み出す土地の土や風、水の匂い、それをつくった人々のぬくもりまで伝わるようなものを撮らなくてはいけない。
それは、ひとことでいえば「夢」だ。このサイトで「お取り寄せ」をする人は、単においしい食べ物を買っているのではなく、これは遠く離れた、もしかしたら一生足を踏み入れることのない土地で丹念に育まれた食品だという「夢」も同時に買っている。
夢の伝え方はさまざまだった。ときには接写できめの細やかさを見せることもあれば、その土地の人が考えに考え抜いたデザインのパッケージだけを写すこともある。そういった見せ方は文章やキャッチコピーとも密接に関わってくるから、私は基本的にはすべての撮影に立ち会っていた。
いつもなら遅くても午後10時には撤収できるのに、12時を回ってやっと撮影が終わった。祝田くんのアシスタントや、スタジオの管理人さんにももう帰ってもらっている。
「こんな時間まで付き合わせちゃってごめん」
祝田くんは背景用のボードをくるくる丸めながら、ペコリと頭を下げた。
「ううん、気にしないで。遅くまで頑張ったよね。帰りにラーメンでも食べようよ」
この仕事を始めてから、多少食べすぎても太らなくなった。それだけハードワークなのだ。
祝田くんが荷物をまとめたのを確認して、スタジオのドアを開けようとする。だが、
「あれ?」
何度もドアノブを回したが、鍵が開かなかった。オートロックだが、内側からは簡単に開くはずだ。現に撮影中、何度か買い物に出た。
「開かないんだけど……」
「俺がやってみる」
祝田くんが代わるが、結果は同じだった。彼は困ったような顔で振り向いた。
「閉じこめられたみたい」
このスタジオはいくつかある部屋のうちすべてを、防犯のため、夜間は内外からともに開かなくなるようにしてあるという。夜間の使用者がいる場合は、オーナーや管理人から事前に管理会社に連絡する。祝田くんは夜8時を回った時点で今夜は遅くなると見込んで管理人に伝えたし、私もそれを聞いていた。
オートロックを解除できるのは、オーナーだけだそうだ。正確にいうと、オーナーが委託している管理会社だけ。
「ちょ、ちょっと、どうしよう」
私はうろたえた。
2017.3.21 up 「頑張ってると思うから」

「心配しないでいいよ。オーナーに連絡して、開けてもらおう」
祝田くんはこのスタジオの常連なので、オーナーの電話番号も知っている。コートのポケットからスマホを取り出して電話をかけた。
が、出なかったようだ。
「うーん、真夜中だもんなー」
「管理会社の電話番号はわからないの?」
「玄関に貼ってあった気がするんだけど」
「それ、意味ない」
玄関に行くには、このドアを開けなければいけない。
窓はあるが、ここは3階だった。飛び降りるわけにもいかない。
「とりあえずメールと留守電を投げておくよ。……トイレもあるし、一晩ぐらいなら何とかなるだろ」
「一晩ね」
長い。長すぎる。おいしいラーメンを食べて、早く家に帰って寝たい。
だが、そんなことをあえて口にしても雰囲気が悪くなるだけだ。べつに祝田くんが悪いわけではない。私は小さい溜息だけをついて、そこにあったパイプ椅子に腰かけた。
祝田くんは常備されているお茶セットの残りで、自分と私の分のお茶を淹れて出してくれた。
「ご不便をかけてすみません」
そう謝ってきた気持ちに、嘘はないだろう。自分が予約を入れた贔屓(ひいき)のスタジオだから、こんなことになってしまったのが申し訳ないに違いない。
私は少しだけ緊張していた。お互いの家を行き来したことはあっても、一晩一緒に過ごすのは初めてだ。こんな状況を「一晩一緒に過ごす」といっていのかわからないけれど。
「明日は朝から予定が入ってるみたいだし、早朝には何とかなるよ」
私の機嫌をとるような声を出す。こちらも申し訳ないような気がした。
やがて、部屋の中が少しずつ寒くなった。
「空調も切れちゃったね……寒くない?」
感覚や感情というのは、底でつながっているものなのだと思う。私は、何だか心細くなってしまった。疲れていたせいもあるかもしれない。
「寒い?」
隣に座った祝田くんが、私の肩に腕を伸ばす。
「えっ」
思わず身を引いた。
祝田くんの手は私の肩を素通りした。彼は私の椅子に掛けてある自分のコートを取っただけだった。
(び、びっくりした……)
温めてくれるとでもいうのだと思った。私と祝田くんは、付き合い自体は長くてもそんな関係じゃないのに、と勝手に勘違いしていた。
いつもならもっと冷静に見られていただろう。やっぱり疲れているんだ。勝手に追い詰められて、勝手に焦っている。
「これ、着てなよ」
取ったコートを渡してくれる。
「祝田くんは寒くないの?」
「俺はいいよ。そんなに寒くないし……伊川さんのほうが頑張ってると思うから」
「そんなことないけど……」
でも、コートを貸してくれること自体は正直ありがたい。頑張っているかはともかく寒いのは紛れもない事実なので、お礼を言ってありがたく羽織らせてもらうことにした。
コートは、祝田くんの匂いがした。普段から気づいているけれど、あえて意識しなかった匂いだ。至近距離で強く鼻孔に吸い込むと、何だか妙にドキドキしてしまう。
「え、何?」
祝田くんが、そんな私をじっと見つめているのに気づいた。
その口が、何かを言おうとして開く。
2017.3.22 up 「俺が何とかする」

(な、なに……?)
何を言おうとしているのか。それが気になって、息をすることも忘れた。
祝田くんの言葉を待っているのか、それとも言わないでほしいと願っているのか、自分でもよくわからない。
言葉よりも先に大きくて骨ばった手がぬっと出てきた。
「ひゃっ」
私の頭をポンと撫でる。
目を見開いたまま、口をぱくぱくしてさせてしまった。
「ちょ、ちょっと……」
肩透かしなこと、この上ない。からかわれたような気分でもあった。
頬を膨らませかけた私に、祝田くんは照れたような笑みを浮かべた。ふわりと甘い香りが漂ってきそうな笑顔に、つい気持ちがほぐれる。
「いつも頑張ってるよね、お疲れ様」
祝田くんは私の頭に乗せたままの手を、もう二回ポンポンと軽く上下に動かしてみせた。まるで子どもを褒めるときのように。
「こんなときでもないと、ちゃんと言えないからさ。最近、伊川さんとはゆっくり話をする時間もなかったから」
そこまで言って、わずかに目を逸らした。ほんのり頬が赤くなっている。
「だから俺は、こんな状況になったのを悪いとばかりは思っていないんだ」
「わ、私は……っ」
返そうとしたが、続きが出てこなかった。
そもそも、言いたいことがあったわけではなかった。照れ隠しでとっさに出てきただけだった。
私は勝手に、もっと、こう……違うことを考えていた。「違うこと」を、彼が口にするんじゃないかと。
顔が熱くなっていく。私、一人で何を浮かれていたんだろう。祝田くんは「そういう目で見る相手」じゃないのに、二人きりになったら妙に意識してしまった。これが「恋多き女」? みんな私の何を、どこを見ていたんだろう。こんなに不器用なのに。
そのとき、部屋の中にベルの音がけたたましく鳴り響いた。
「何っ?」
私は立ち上がり、半分悲鳴のような声をあげた。
「火災報知器だ」
祝田くんも立ち上がる。
「こんなときに火災? ちょっと俺たち、タイミング悪すぎない?」
「ちょっと、もっと焦ってよ。火事なのに出られないんだよ、私たち」
「こう見えても焦ってるよ」
「け、警察呼ぼう! じゃなくて、まずは消防車? えっと、110番? あれ、119だっけ? ああっ、もう、どうしよう!」
私は今度こそ悲鳴をあげた。閉じ込められている状況と、火事。どちらかひとつずつだったらもう少し冷静に対応できたかもしれないけど、ふたつが一度に襲いかかってくると、理性があっさり飛んでいってしまった。
目の前がちかちかする。
「落ち着いて、伊川さん」
ふいに体が暖かいもので包まれた。ほどよい圧力が背中にかかる。
祝田くんが、私を抱きしめていた。さっきまで頭をポンポンと撫でていた手が、今度は背を軽く叩く。
「大丈夫、俺が何とかする。まず、すぐに消防車を呼ぼう。それから窓から壁を伝って降りられそうなものを探そう。ドアを叩き壊せるものでもいい。少し頭を回せば大丈夫だよ」
一語一語、丁寧に頭の中に染みこませるように耳元で囁く。
その声が心地よくて、こんなときだというのに体が内側から解されるような安らぎを覚えた。市川くんに対して感じたのとは違う、穏やかに暖められた春の空気のような気持ちだった。
もっとこの声を聞いていたい。もっとこのぬくもりに包まれていたい。もっと……ううん、ずっと、この人と一緒にいたい。仕事仲間としてでなく、男と女として。今初めて、はっきりとそう自覚した。
スマホの着信音が、ベルの音に重なった。
「はい」
祝田くんが素早く電話に出る。
「はい……はい。そうなんですか、わかりました。お願いします」
その顔から、次第にこわばりが消えていった。
2017.3.23 up 「好きだよ」

「オーナーからだった」
電話を切ると、祝田くんは私の顔を覗きこんだ。
「火災報知器が誤作動して、オートロック機能にも影響したらしい。すぐに警備会社の人が来るから、ちょっと待ってて、と」
「じゃあ、火事じゃないの?」
「うん、心配いらないって」
私はパイプ椅子に再びぺたりと座りこんだ。
「人騒がせなー!」
怒りも湧いてきたが、安堵のほうが大きかった。
警備会社の人は、ものの数分で駆けつけてくれた。ドアの鍵がガチャリと音を立てて開いたかと思うと、「大丈夫ですか」と制服姿の男性が二人、飛びこんできた。
少し遅れて、オーナーもやってきた。三十代後半に見える男性だ。
「お騒がせして本当に申し訳ありません」
彼は祝田くんにも私にも、警備会社の人たちにも何度も何度も頭を下げた。
誤作動の原因は、おそらくだけれど、表の通りに捨てられた吸い殻の煙を、入り口に近いところにある火災探知機が拾ってしまったからだろうということだった。
私と祝田くんはスタジオを出ると、祝田くんの車に乗りこんだ。
「遅くなっちゃったね」
彼はひとりごとのように呟く。エンジンを入れると、ポンと音を立ててナビが起動し、同時にラジオの音にも包まれた。古いウィスキーの味わいを思わせる、しっとりとした昔のジャズが車内に流れる。
いつもの音なのに、やけに胸を刺激される。さっき抱きしめてもらったときに考えていたことを、改めて思い出してしまった。この人と、ずっと一緒にいたい――。
車を発進させ、いくつめかに止まった信号で祝田くんはぽつりと言った。
「心臓の音、気づかれたよね」
私はわけがわからなくて、祝田くんのほうを向いた。横顔をまじまじと見てしまう。鋭角的なのに、細いせいか優しさを感じさせる鼻の線だった。
祝田くんは信号を気にしながら、視線をさっとこちらに向けた。
「もうバレたと思うから言うけど、俺、ずっと伊川さんのことが好きだったんだ」
「え……っ」
すぐにはそれを信じられなかった。祝田くんのことを信用していなかったわけではなくて、今、このタイミングで言われることを予測していなかったからだと思う。
祝田くんは顎のあたりを人差し指で軽く掻いた後、おそらくは無意識に、決心するように小さくうなずいて、車を路肩に止めた。今度はきちんとこちらを向く。
「伊川さん、君のことが好きだ。俺と付き合ってほしい」
ストレートな、あまりにもストレートな告白だった。
「……私も……」
返す声が、震えてしまう。
「私も、祝田くんが、好き」
それでも私は、はっきりと言った。
祝田くんは、少ししどろもどろしながらも唇を近づけてきた。そっと目を閉じる。私たちは、初めてキスをした。
***
数日後、祝田くんの家に行った。
チャイムを押し、ドアが開けられ、中に入る……という、おなじみになった感のある一連のアクションの後、もう一動作が新たに付け加えられた。
「んっ……」
玄関の壁に優しく押しつけられて、キスする。
唇だけで何度か探り合った後、お互いの気持ちを確かめ合うように舌を絡ませた。
しばらくして唇を離すと、祝田くんは私を見つめ、囁いた。
「好きだよ」
2017.3.24 up 「ほしいの?」
その夜、私と祝田くんはベッドで硬く抱き合っていた。
もう何度目になるかわからないキスを、飽きることもなく交わす。ときには唇だけで浅く、ときには舌が喉の奥に達しそうになるぐらい深く激しい。会話よりも雄弁なキスだった。
服はとっくに脱いでいる。さっき二人でシャワーを浴びて、すぐにベッドに移動した。
シャワーを浴びながら愛撫されたので、体はすっかり火照っている。アソコももうトロトロで、動くたびにかすかに音がするぐらいだ。
その濡れた花びらを、祝田くんは長い指で弾くように弄んだ。普段は同じ現場でカメラに触れている指が……と思うと、興奮した。
彼はベッドの脇から細い棒のようなものを取り出した。さっき服を脱ぐときに私がポケットから床に落としたヌレヌレだった。
「塗っていい?」と訊かれたのでうなずくと、ハケでゆっくりと私の唇に塗り始めた。敏感になっている唇にはそれだけでも気持ちよく、目と閉じてかすかに喘いでしまう。

「色っぽくなった」
祝田くんの声が、瞼のあたりに落ちてくる。目を開けると、またキス。あたたかなシャワーのように受け止める。
彼はグロスの出なくなったハケを、私の肌に滑らせて愛撫した。
「あ……っん」
細くて柔らかいハケは独特の感触で、それで首筋や胸を撫でられるとたまらなかった。
「伊川さん……結の、こんな色っぽい声を聞けるなんて」
祝田くんはヌレヌレを置くと、今度は自分の舌と指で同じ声を出させようとした。表面を均されるように全身を丁寧に舐められていると、アソコがむずむずしてたまらなくなってきた。
ほしい。祝田くんが……ほしい。
「ここ……ひくひくしてる。ほしいの?」
「……ほしいっ」
祝田くんより私のほうがずっと興奮している。やっぱり私は恋多き女なんかじゃない。いちいちこんなふうになってしまうんだから。
「じゃあ、挿れるからね」
脚を開かせて、先をそっとあてる。ぞくりとした。
「んんっ……う」
重くて密度の高いものが入り込んでくる。
「あああ……っ」
入れられたところから溶けてしまいそうなのに、中は祝田くんを強く締めつけている。私は女なんだと、頭ではなくその部分で感じた。
「気持ちいい……結の中」
祝田くんも苦しげな声をあげる。
「もう、俺のものだね。愛してる、結」
「私も……」
硬く抱き合いながら、祝田くんはどんどん深く入っていった。
***
私は橘さくら。芸名みたいな名前だけど、立派な本名だ。昔はかわいい、きれいな名前だと思っていたけれど、30歳にもなると名前負けしているんじゃないかと少し不安になる。年を誇れるほどの経験もないから、なおさらだ。
仕事は、兄が所有する撮影スタジオの管理。予約を調整したり、撮影後の掃除をしたり、そんな業務内容だ。平たくいえば雑用である。兄によると、先日、私が帰った後に火災報知器が誤作動して大騒ぎになったらしい。でも私のような雑用係にはすぐには連絡は回ってこなくて、翌日出勤したときに初めて兄から知らされた。まあ、連絡されたとしても慌てるだけで何もできなかっただろうから、兄もそれをわかっていていただけかもしれない。
この仕事はほんの二ヶ月前に始めたばかりだ。以前は、一応大手と呼ばれるソフトウェア会社で派遣で事務職をしていた。そういえば、予定通りにプロジェクトが進んだのであれば「アイ」という人工知能がリリースされているはずだけれど、あの話はどうなったんだろう。
それはともあれ、私は大学を卒業して社会人になってからずっと、もやもやしていた。派遣ばかりで正社員を目指すこともしなかったのは、そのもやもやのせいもある。
「仕事で頑張ること」って、そんなに正しいのだろうか。
私にはどうも、そういうのが性に合わないみたいだ。もっとのらりくらりと、力を抜いて生きていきたい気持ちがある。
そんな自分にやっと気づいて、退職。とはいえ、無職でぶらぶらしているわけにもいかないから、ここにお世話になっている。
じゃあさっさと結婚して落ち着きたいのかといえば、そんなこともない。結婚したいわけではないけれど、べつに今、好きな人もいないし……。
好きなこと、夢中になれることに出会えていないだけという気もする。でも30にもなって、そんなことを言っていられないとも思う。
「何かしなければ」という漠然とした焦りだけがあった。
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耳元でささやいてほしい!
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こんな時間まで付き合わせちゃってごめんね、
● ??? さん
遅くまで,仕事頑張ったね!
● みき さん
お前は、俺のだから
● すーさん さん
好きだよ!


大人気、あの名作を再び…!
