
みんなで作る小説!ストーリーC
恋欠女子とバーチャル男子「AI」との恋愛応援物語

■恋欠女子とバーチャル男子ストーリーC
みんなで作る!恋愛応援小説『恋欠女子とバーチャル男子〜AIがあなたのお悩み解決します〜』が新連載としてスタート!アンケートの結果で行方が変わる、恋愛模様に目が離せない!
不思議なアプリ 「バーチャル男子」の開発秘話を公開します!


2017.4.17 up 「モヤモヤっとした気分」

中坂さんにも山県さんにも、まだ予定がわからないから返事を少し待ってほしいと頼んだ。
ライブも美術展も、自分から行こうと思ったことはない。
音楽は家でひとりでゆったり聞きたいし、美大を出たとはいっても勉強していたのはグラフィックやデザインで、美術作品自体にはあまり興味がなかった。
それでも誘ってもらえると嬉しくなって、せっかくだから行ってみようと興味が湧いた。
(ライブと水彩画展。中坂さんと、山県さん……)
私はいつしか、どちらのイベントに行きたいかというよりも、どちらの男性と一緒にいたいかを考えていた。
中坂さんと山県さんそれぞれの、笑った顔やきょとんとした顔、優しげにこちらを覗きこんで暮れる顔などが次々胸に浮かび上がる。そんなにたくさん表情を知っているわけではないけれど、ひとつひとつが頭の中にしっかり焼きついていた。私は自分で思うよりも、二人に強く惹かれていたのかもしれない。
最後に残ったのは、中坂さんのほうだった。
***
「誘うのは勇気がいることだから。断るときには謝ったほうがいい」
というアイのアドバイスを受けて、山県さんには断るだけではなく、きちんと謝ることにした。
自分から誰かを誘ったことなんてないけれど、勇気がいるという感覚は理解できる。私なんてとくに、誘いを断られたら、そのイベントに興味がないのか、それとも自分自身に興味がないのか、状況によっては不安になってしまいそうだ。
数日後の昼休み、自販機で缶コーヒーを買っていた山県さんに近づいて話しかけた。
「水彩画展、行けなさそうです。行きたい気持ちはあったんです。でも、どうしても予定が調整できなくて……せっかく誘ってくれたのに、ごめんなさい」
頭を下げると、山県さんは笑って首を横に振った。
「そんなに恐縮されると困っちゃうよ。気にしないで」
山県さんは缶コーヒーを二、三度振ると、タブを開けて口をつけた。どこか飄々とした様子で、本当にあまり気にしていなさそうに見えた。
***
週末、私は中坂さんのバンドが演奏をするというライブハウスに向かった。
ライブハウスなんてところに行くのは初めてだ。地下のその施設は、防音用の分厚いドアの向こうにあって、まるで秘密基地のようだった。
今日、出演するのは、中坂さんのバンドだけじゃない。2バンドいて、中坂さんたちは後半に演奏するとのことだった。
中に入ると、思ったより暗かった。ステージの照明を際立たせるためだろう。広いとはいえない場所だったが、人も結構入っている。
観客は、意外に女の子が多かった。フロアの後ろのほうに溜まっているから、今、演奏しているバンドではなく、中坂さんたちが目当てなのだろう。女の子に人気があるのかと思うと、なんとなくモヤモヤっとした気分になった。
薄暗いのにも関わらず、自分の格好が気になった。
この服、似合っているだろうか。髪型はヘンじゃないだろうか。
男性に誘われるなんて初めてなので、アイに相談して洋服選びから奮闘した。自分の基準からすると、モノトーンを基調にした、いつもより大人っぽい、女らしい格好になっている。
「雪奈はふんわりした色を選ぶことが多いけど、顔のつくりがはっきりしているから、シックな色もちゃんと着こなせると思うんだよね」
そんなふうにアイは言ってくれた。
バーカウンターでウーロン茶を買って飲んでいると、最初のバンドの演奏が始まった。
2017.4.18 up 「俺のために」

四十分ほどで最初のバンドの演奏が終わり、中坂さんたちの演奏が始まった。
さっきまでフロアのほうにいた女の子たちが、前のほうに移動していた。どうやら彼女たちの目当ては、中坂さんたちのバンドのようだった。正確にいうなら、ボーカルの男性。みんな彼の前に集まっている。ボーカルの男性は、まるでモデルのように背が高く、顔立ちも整っている。ちょっと、ほっとしてしまった。
中坂さんたちの音楽は、音楽なんてあまり聞かない私にも耳なじみのいいポップスだった。メロディもリズムも軽快で、生演奏を聴いているとつい体が動いた。
じっと舞台を見つめていると、中坂さんと目があった。どうしたらいいのかわからずにドギマギしていると、指を弦から放してさりげなく手を振ってくれた。
(う、うわっ……)
緊張しながらも、ぎこちなく振り返す。幸い、女の子たちから睨まれるようなことはなかった。
初めての刺激に呆然としているうちに、演奏が終わった。みんな、各々の楽器を持ったまま舞台の袖に消えていく。
もう帰ったほうがいいのかと思ったが、観客は去っていかない。これから何かあるのだろうか。どうしたらいいのかわからずに、立ちすくんだままでいた。
突然、肩を軽く叩かれた。
振り返ると、中坂さんだった。ほとんど同時に、熱い感触で包まれた。
「俺を見に来てくれて嬉しい!」
「え……っ!?」
抱きつかれたのだと、数秒後にわかった。
驚いて声が出ない。ただ、固まってしまった。
中坂さんは抱きついたのと同じぐらい突然、私をぱっと離した。
「いやー、ごめん。ライブの後だから、汗すんごいし」
「……ふふっ」
自分の体をくんくん嗅ぐ中坂さんを前にして、いきなり抱きつかれた驚きも忘れて、ふき出してしまった。
「ごめん、ライブの後ってテンション上がっちゃってさ。驚いたよね」
爽やかな笑顔でぺこりと頭を下げる。普通だったら怒るところなんだと、今さらながら気づいた。小さな台風に、いろんな感情を攫われてしまったみたいな感覚だった。
中坂さんは半歩下がって、私をまじまじと見つめた。
「いつもと違うからわからなかった。でも、とても似合っているよ」
「そ、そうですか?」
「うん。俺のためにキレイな格好で来たんだな。嬉しいよ」
冗談だとは思うけれど、間違っているわけでもないので何と言い返したらいいのかわからず、うつむいた。顔がどんどん熱くなってくる。
「おーい、弾正」
背後から中坂さんに声をかけた人がいた。バンドのドラムの人だった。
「ジャムセッション、そろそろ始まるぞ。楽屋戻れ」
「わかった」
中坂さんは彼に頷くと、私に向き直った。
「これから今日の出演者全員で演奏するんだ。よかったらそれも聞いていって」
彼はフロアを去っていった。
2017.4.19 up 「俺のこと、好きになっただろ」

やがて演奏が始まった。出演者全員での演奏は1バンドずつのときよりも音が厚くて迫力があった。
とくに演奏する内容を決めておらず、即興でやっているようで、時々笑い声が混じる。
そのうち、誰からともなくお客さんがステージに上がり始めた。バンドもメンバーも、ライブハウスのスタッフも止めず、笑ってそのままにしている。やがてステージ上はお客さんでいっぱいになってしまった。お客さんたちは、メンバーと合わせて歌ったり、踊ったりを始めた。
私はといえば、どうしたらいいのかわからず、ステージのすぐそばでぽかんとしているだけだった。こういうときにすぐにどう行動したらいいかを決められるほど、場数を踏んでいない。
中坂さんが前に出てきた。何かと思う間もなく腕を掴まれ、ひょいとステージに連れていかれる。
ステージはぎゅうぎゅう詰めだったが、中坂さんは私を守るように抱き寄せてくれた。それでもうまく立てなくて、中坂さんの服の裾をちょこんと掴んでしまう。「どうしたいいの?」という意味を込めて、彼を見上げた。
ふいに耳元に熱い息がかかった。息には、声が混じっていた。
「かわいいな」
中坂さんは、確かにそう言った。
***
頭に血が上ってぼーっとしていた間に、演奏は終わった。自分が何をしていたのか、よく覚えていない。
人酔いをしてしまったせいもあって、フロアの壁際にあったベンチに座った。観客たちは販売ブースでグッズを買ったり、フロアに出てきたメンバーと話をしたりしている。
中坂さんが近づいてきた。荷物を持って、ベースも背負っている。
「疲れたでしょ。よかったら駅まで一緒に帰らない? 俺ももう出られるから」
「打ち上げとかはいいんですか」
「いいの、いいの。いつもやってることだし。毎回、必ず全員出席するわけじゃないしね」
少し照れくさい気もしたけれど、誘ってもらったお礼も言いたかったので、ご一緒させてもらうことにした。
フロアを出ようとすると、手にビールのカップを持っていたファンらしき女の子が声をかけてきた。
「ダンジョー、彼女できたの?」
「そう。俺の一目惚れなのだ」
女の子が私の顔を覗きこんでこようとする。慌ててうつむくが、間に合わない。すると中坂さんが手で隠してくれた。
「ふっふっふ、簡単に見せるわけにはいかないね」
中坂さんは悪戯っぽく笑う。
フロアの外に出て、階段を上がってから気がついた。
(あ、否定するの忘れてた)
でも、面と向かって否定するのも何とも申し訳ない。どう言い出すべきか考えていると、中坂さんがさっきと同じ種類の悪戯っ子めいた笑顔で話しかけてきた。
「俺のこと、好きになっただろ」
「あの……」
私は、これまでずっと疑問だったことを口にした。
「どうして私なんかのことが好きなんですか」
「好みのタイプなんだってば」
答えは簡潔だった。
「でも、いくら好みとは言っても、私ぐらいの女の子だったらほかにもたくさんいます」
「そういうんじゃないんだよなぁ……」
中坂さんは歩く速度を落として、何かを考えるように首を傾げた。
2017.4.20 up 「少しずつでも好きになって」

「……なんというか、雰囲気なんだ。居酒屋でちらっと見ただけだけどさ」
「雰囲気?」
今度は私が首を傾げた。
「皆ともっと仲良くなりたいのに、壁の壊し方がわからなくて必要以上にまわりを冷静な目で見て、それがまたどんどん壁を高くしてしまって……って感じがね、好きというか、正確にいうと親近感を覚える。別に拒絶しているわけじゃないのに、拒絶しているように思われて、居心地が悪くなって。君って、そんなことを感じて生きているんじゃない?」
その通りだった。中坂さんをまっすぐに見つめて、深く頷く。
「昔の自分と似ていたんだ。高校のときの自分に。しぐさとか目線とかで、何となくわかる。俺、中学のときは学校の人気者だったんだけど、記念受験のつもりで受けた高偏差値の進学校にうっかり合格してしまったら、自分に自信がなかったこともあって、どう振る舞ったらいいのかよくわからなくなってしまって。で、焦れば焦るほど人とのコミュニケーションの仕方がわからなくなって、一時期は登校拒否にもなった」
「そうなんですか」
意外だった。今のカラリとした初夏の日差しのような彼からは想像もできない。
「しょうがないから一人で家で音楽を聴いていたり、演奏をしたりしていたら、学校の資料を届けに来てくれた奴と偶然話が合って、そこから自然に友達ができたんだけどね。でもそいつと友達にならなかったとしても、いつか、何かで立ち直っていたとは思う。だからさ……」
中坂さんは歩みを止めて、体ごとこちらに向き直る。
「大丈夫だよって、言いたかったんだ。何かひとつ、ちょっとしたきっかけが見つかるかどうかだから……それはたぶん、遅かれ早かれ見つかるものだと思うから、そんなに気負うことないよって。……こんなことをいきなり言って、『何か勘違いしていませんか』なんて返されてもおかしくないから、なかなか伝えられなかったんだけど」
「勘違いなんかじゃ、ないです」
私は答えた。涙が出てきそうだった。
ポン、と大きな手が私の頭を撫でる。
「よかったよ、ちゃんと話せて。今までの俺、しつこくナンパしているみたいだったもんね」
中坂さんは苦笑して、それからすぐに表情を引き締めた。
「本当のことを言えば、今までは余計なお節介で励ましたかっただけなんだけど、今日、改めてかわいいなと思った。すぐに付き合ってくれとか言わないから、俺のこと、少しずつでも好きになってくれたら嬉しい」
「はい……」
他に何と言ったらいいのかわからなくて、黙ってしまう。嬉しい。嬉しいんだけど、それだけじゃなくて、少しだけ不安で……何をどう伝えたらいいのかわからない。
やがて、地下鉄の入り口が現れた。私たちの家は逆方向だったので、そこで別れた。
「またメールする」
地下鉄に乗っている間も、帰宅してからも、ずっと心臓がドキドキしていた。「少しずつでも好きになってほしい」という、さっきの中坂さんの言葉が、寒い夜に飲む温かなポタージュスープの体じゅうにじんわりと染みわたっていく。
ポン、とメールを受信する音がしたので、急いでスマホを確認した。
「今日はありがとう。ライブを見てもらえて本当に嬉しかった。よかったら、また会おうよ」
メールには、そう書かれていた。
「私も、会いたいです」
少し迷ったけれど、そう返事した。
2017.4.21 up 「後ろから抱きしめられた」
私は、会社でそれまでよりも明るく振る舞えるようになった。「笑顔が増えた」と言われることが増え、急に話しかけられたりしても、驚いたりたじろいだりすることなく、落ち着いて対応できるようになった。
「拒絶しているように見えたらどうしよう」という不安が少しずつだが軽くなっていって、「ほんの小さなきっかけさえあれば、心を開くことができるようになるんだ。だから焦らなくてもいいんだ」と思うようになれたことが大きかった。
中坂さんのおかげだ。
あるとき、グラフィックチームの先輩の女性たちにランチに誘われた。
「ずっと誘ってみたかったんだけど、なんとなく、声をかけるきっかけがなくて」
とのことだった。
メンバーの中には、山県さんのことが好きだという先輩もいた。彼女はランチの席で、今日は山県さんとこんなことを話せて嬉しかっただとか、最近彼はあんなことに興味があるらしいから自分も調べてみようと思っているだとか、自分の気持ちを隠さずに話した。噂は、本当だったのだ。
彼女のことが、ちょっとだけ羨ましかった。自分の心をこんなふうに屈託なく周囲に話すことができたら、そうして共感してもらえたら、人生はもっと楽しくなるのかもしれない。
彼女はそう意図したわけではないだろうけど、なんとなく仲間として認めてもらえたようで、それも嬉しかった。
(よかった、山県さんのことを好きにならなくて)
私にはもう、別に気になる人がいる。山県さんへの思いは断ち切ろうと、心に決めた。
***
それから何度か中坂さんに会った。食事もしたし、ライブにもまた招待してもらった。
私は少しずつ明るくなれていることや、会社でも周囲と打ち解けられつつあることのお礼を言った。
ある日の食事の帰り、並んで夜道を歩いていると、中坂さんにそっと手を握られた。びっくりして離そうとしたが、中坂さんの力は意外に強く、びくともしなかった。
「いや……かな」
中坂さんは困ったような笑みを浮かべて、こちらを窺った。
「いえ……いや、じゃないです。あの、びっくりしただけで」
私は手から力を抜いた。本当に、いやではなかった。
中坂さんの手は、大きくて暖かかった。心臓が高鳴る。つないだ手から気づかれるのではないかとドキドキした。
私たちは黙って歩いた。それまでライブや仕事の話題で盛り上がっていたのが嘘みたいだった。二人して、つないだ手に神経を集中させていたのだと思う。
やがて、駅が見えてきた。中坂さんはもう少し離れた別の路線の駅まで行くが、私はここで地下鉄に乗らなくてはいけない。
駅は住宅街の中にあった。大きくはない駅の、さらに小さな出口で、あたりに人影はない。蛍光灯がぽつんと駅の入り口を差している様子が、何だか寂しげだった。
「今日は、どうもありがとうございます」
「うん、また」
私たちはどちらからともなく手を放した。
別れたくない気もした。でも、これ以上一緒にいたとして、次に何をすればいいのかわからない。だから仕方なく、いつものように地下に続く階段を降りようとした。
そのとき、後ろからふわりと何かに包まれた。

「な、中坂……さんっ?」
中坂さんに、後ろから抱きしめられたのだった。
耳元に、ふっと熱い息がかかる。初めて行ったライブで「かわいいね」と囁かれたあのときと同じように、息には声があった。
「そろそろ聞かせて。俺のこと、どう思ってる?」
私は……
![]() |
※クリックで投票してください。 |

● れいん さん
上目遣い!可愛いらしいと思う!
● ??? さん
"男性に誘われるのは初めてなので、洋服選びから奮闘。
AIにアドバイスを受けて、ヘアーアレンジもしてみる。
「いつもと違うから、ちょっとわからなかったよ。
でもとても似合っているよ。」
声を掛けられて、またもや赤面してしまう。"
● アンシア さん
雪奈がどちらを選ぶとしても、断る相手に誘ってくれたことのお礼が言えたらいいなと思います。誘うことは勇気が要るので・・・
● Naru_m☆ さん
どつちに行くか考えているうちに好きになっていることに気付く。
● 裕子 さん
アイのアドバイスは補助的なもので、最後は自分で動かなければもったいない。
● みったん さん
大好きだ
● 希沙羅 さん
俺の為に、綺麗な格好で来たな。
嬉しいよ。
● あゆゆ さん
「俺を見に来てくれて嬉しい!」って言いながら、主人公に抱きついてきたかと思ったら、急いで離れてしまう。
きょとんとしていたら、恥ずかしそうに「ライブの後だから、汗すんごいし」って言う。それに笑ってしまう主人公。とかいいなぁ。
● ??? さん
音楽は家でゆったり聞きたいし、美術作品もあまり興味がないのでどちらの誘いもあまり乗り気ではない。
● キャラメルラテ さん
急にサプライズで舞台に上がるように指示してほしい。
● ??? さん
可愛い仕草
● ヒゲマニア さん
定番の頭ポンポン
● Ai さん
周りと打ち解けるような行動
でもうまくいかなくて、悩む。
● さくらいろ さん
俺様でぐいぐい行くかと思ったら、ちょっと引いて残念的な行動。キュンキュンします
● ゆっさん@大人女子 さん
見つけたら笑顔で手を振ってほしい
● バリアユ さん
バックハグや強引なアプローチ
● ひよ さん
手をつなぐ
● ぐうすけ さん
おまえ、俺が好きだろ?
● かめむし さん
後ろから抱きしめてほしいです?
● neko23 さん
彼氏の洋服のスソをちょこんと掴む